「怖いからやりたくない」「非常時に役立つ」… 那覇ミサイル避難訓練 響くサイレン 近隣の公園はいつも通りの光景


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ミサイル発射を告げる警報に耳を押さえて地下駐車場に移動する参加住民ら=21日午前、那覇市銘苅のなは市民協働プラザ(又吉康秀撮影)

 21日、沖縄県那覇市銘苅のなは市民協働プラザで行われた外国からの弾道ミサイル飛来を想定した住民避難訓練は、銘苅周辺地域の住民と銘苅こども園に通う園児や家族ら106人が参加した。沖縄戦の傷跡も残る場所での訓練実施に、抗議する市民らは「戦争協力に反対」と訴えた。避難した地下駐車場で持参した防災頭巾をかぶり、壁に沿ってひとかたまりにうずくまる子どもたち。「怖いからこんなことやりたくない」「非常時には訓練が役立つ」―。参加者は突き付けられる“有事”に戸惑いの表情を見せながら、訓練に参加した。

 「ミサイルが発射されたものとみられます」―。午前10時すぎ、防災用のスピーカーからJアラートの警報音と共に放送が流れると、参加者は消防団員らに誘導されながら施設の地下駐車場へと避難した。駐車場内では、参加者が壁側に沿ってしゃがみ込み、数分間頭を手で覆った。中には持参した黄色の防災頭巾をかぶった子どももいた。3歳と6歳の男児と一緒に参加した母親(44)は「怖い感じがした。たくさんの人が壁にすがっているように感じた」と顔をこわばらせながら話す。「でも、非常時ではこういう訓練が役に立つ」と語る。保護者と一緒に参加した男児(6)は「怖かった。こんなことやりたくない」とつぶやいた。

 ミサイル通過の想定時刻は10時8分、参加者全員が通過時刻よりも2分早く避難した。銘苅に住む女性(43)は娘(16)と一緒に訓練に参加した。女性は自然災害など、日ごろから防災への意識があった。北朝鮮の弾道ミサイル発射や台湾有事のニュースなどを目にして、「有事の際、どのようにすれば家族の命を守ることができるか」と考え、参加した。「沖縄には米軍基地もあり、狙われる可能性がある。娘が独立し、離れて暮らすことになった時、自分一人で命を守るための行動を知るきっかけになったと思う」と語った。

 銘苅小に通う小学生3人の子どもと参加した女性(35)は、「知らないより知った方がいいと思って参加を決めた」という。「実際に起こるかもしれない。地下に避難するのは知っていたが、頭を下げるのは知らなかった」と話す。「(抗議する)デモの声が大きくて職員の案内が聞こえなかったのは残念だった」と漏らした。

 近くにある新都心公園ではジョギングやウオーキングなどを楽しむ人、スポーツを楽しむ子どもなど、いつも通りの光景が広がった。ウオーキングをしていた銘苅在住の男性(79)は「避難訓練については知らなかったが、知っていたとしても参加はしなかった」と話す。「自分は戦前生まれ。沖縄戦の記憶はないが、幼い頃、那覇には戦争の傷跡が生々しく残っていた」と振り返る。「訓練に抗議する市民の気持ちは分かる。市は国と同調して市民に戦争をあおりたいだけじゃないのか」と首をかしげた。

(金城実倫、梅田正覚)