今は新しい戦前か? 世界に届け沖縄の思い 崎原末子(フレンズ&5代表取締役)<女性たち発・うちなー語らな>


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 2023年癸卯(みずのとう)、旧正月です。今年もどうぞよろしくお願いします。

 年の初めはやはり平和と希望を語りたい。沖縄の基地はそのままで、軍備拡張が進められている。

 新型コロナと社会活動の両立、物価高騰などさまざまな課題が押し寄せている今、私たちはいつしかこの環境にも慣れてくるのだろうかと自問自答している。

 1月11日、渋谷の伝承ホールで開催された沖縄啓発プロモーション事業に参加する機会を得た。「本土復帰50年に立つ沖縄、沖縄からの平和発信とは」と題し宮本亜門氏の基調講演や玉城デニー県知事をはじめ4人のパネルディスカッションを通して平和を希求する「沖縄のこころ」を発信し、次世代への平和継承をテーマにしたものだ。

 基調講演の冒頭、宮本氏がタモリさんがテレビで「今の日本は新しい戦前になるのでは」と語ったと話していた。注意力散漫で傍観していた私は、「えっ!」と思い、全身が凍り付いた。その言葉は沖縄にいてその足音を感じないようにしていたのを見透かされた思いだった。

 どの登壇者の発言も素晴らしかったが、どれくらいの会場の方々が自分事として受け取っただろうか。東京で、日本の真ん中でわざわざウチナーンチュがまだ平和を発信するなどしないといけない時代なんだとしみじみ実感した。私も含めて自分事として受け止めなければと。2時間半はあっという間に過ぎ、示唆に富んだ、とても有意義な時間だった。

 私の母は80歳を超えて戦争体験を絞り出すように語っていた。16歳で軍属として伊江島飛行場の補修作業に動員され、激しい艦砲射撃や空襲に遭い、サバニで本部町備瀬崎にたどり着き生き延びた。「戦争で多くの友人、親類を失った。絶対に戦はしてはならない」と語っていた。

 母の他界後、「もっと真面目に話を聞いておけば良かった」と悔やまれる。

 課題にしっかり向き合い、行政や政治家だけの責任にせず、争わないために私たち一人一人が与えられた場所でできることがあるはずだ。次世代へ平和な日常を継承するために自分事としていま一度、現状に目を向けたい。周りの人を大切に愛し笑顔で仲良く、なるべく心の平安が保たれるように努めようと思う。

 ウクライナ戦争も2度目の冬を迎えた。世界中のリーダーが平和や地域の安定のために知恵を絞り、役割を果たそうと頑張っていることだと思う。その任を負う方々は、沖縄においても思想や見解の違いを超えて、“永遠の戦後”が続くような希望を与えてほしい。

 沖縄の歴史は、命、人権、社会を変えてきた歴史でもある、と登壇者の一人が語った。

 しっかり胸に刻み今年をスタートしたい。