prime

「誰一人取り残さない」を目指して<伊是名夏子100センチの視界から>140


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
イラストも描き、手作りした結婚式の招待状

 新型コロナウイルスが日本で発見されて丸3年。予想もしなかったことが次々に起こり、追われるように世界中で生活スタイルが変わってきました。自分がよくやっていたと思うことも、反省することもあります。

 ソーシャルディスタンスが叫ばれる中、私は1日2~3人のヘルパーさんが家に来て生活をしているので、人との接触を減らすことに限界がありました。そして罹患(りかん)したら私が重症化する可能性があるだけでなく、ヘルパーさんは他の障害者が住む家にも行くので、感染させることが不安でした。外から家に帰ったらすぐに着替えをし、お店で買ってきたものもすべて消毒して、できる限りの感染対策をしていました。

 しかしそれは私が対策をするだけの生活の余裕があり、それを理解してくれる人に恵まれていたからできていたのです。家庭の事情や経済的なこと、仕事の状態で、感染対策が取れない人もたくさんいて、そこに思いを巡らせることができなかった自分を反省しています。私の考えが押し付けのようだったり、傷つけたりした人もいたでしょう。

 この3年、人のいろいろな面に気づきました。感染を気にして早期のワクチン接種や定期的な検査を求める人がいる一方で、ワクチンは意味がない、コロナはうそだという人もいました。人と集うことの大切さを重視する人もいれば、入院中や施設で生活する人は家族との面会も一切できなくなった人もいます。ヘルパーさんが次々に辞め、生活がままならなくなった障害者もいます。

 私の場合、ヘルパーさんに感染対策をお願いした時「感染が不安なら、私は来ないでおきましょうか?」という人もいました。ヘルパーさんが来ないと私は生活できないのに、ヘルパーさんは来るか来ないかを選べる立場であること。普段は支え合って生活しているように見えても、災害時や非常時には障害がある人とない人の差が突き付けられると感じました。

 コロナのように、何か問題が起こり多くの人が不安を抱える時、障害がある人をはじめ、マイノリティーへの配慮は少なくなりがちです。マイノリティーは困難さを2倍にも3倍にも抱えると感じました。だからマイノリティーはより頑張らざるを得ず、倒れる人、命の危険にさらされる人も多く出てきます。「誰一人取り残さない」はSDGs(持続可能な開発目標)のゴールでもあります。実現するのが難しいと思うこともありますが、希望を失わず、いろいろな人の幸せ、生きる権利を求め続けたいです。


 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。