本島北部のテーマパーク建設事業について、計画を担うジャパンエンターテイメント社(名護市、加藤健史社長)は2月から本格的に着工する。600億円以上とされる事業費も県内外の企業からの出資などで調達のめどが付いた。同社が目指す2025年前後の開業へ大きな節目を迎え、北部地域だけにとどまらない県内経済全体の活性化へ期待が集まる。
北部テーマパーク計画は、コンサルティング会社「刀」(大阪市、森岡毅CEO)が発案した地域創生プロジェクト。森岡CEOは映画テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」の再建を手掛け、後に運営会社の変更によって断念された沖縄進出計画にも携わった。
18年に準備会社のジャパン社が設立され、刀をはじめオリオンビール、リウボウ、ゆがふホールディングス、県外企業の近鉄グループホールディングスなど数社が出資した。事業資金は600億~700億円程度で、森岡氏は昨年県内で開かれた講演で調達のめどが立ったと報告している。
ジャパン社に出資する企業や投資家は設立時よりも増えているとされるが、詳細は明らかにされていない。ただ、関係者によると、地域創生などの観点から調達先は国内に限られているという。
資金の一部は県内からも充てられている。ファンド運営会社SCOM(浦添市、藤本和之代表)は昨年6月、北部テーマパーク計画を対象に地域振興ファンドを設立。県内を中心に総額15億6千万円を集めた。
テーマパーク計画は、新たな観光をつくり出すことで雇用創出や所得の向上につなげ、持続可能な地域活性化を狙いとする。ファンドは、県内の事業者などが出資する受け皿の役割を担い、沖縄経済の発展に企業や個人が直接関われる環境を整備した。
藤本代表は「県外資本による、沖縄の労働力で得た利益が県外に落ちる構図に複雑な思いをする県民はいるかもしれない。ただ、事業に関わる県民が多ければ、搾取ではなく一緒に成功を喜べる」とファンドの意義を強調。テーマパークを契機とした沖縄経済の成長を願った。
(小波津智也)