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「大丈夫と思いたかった」呼吸確認せず、うつぶせ寝放置…入手資料から分かるずさん体制 那覇・認可外園の乳児死亡から半年


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
乳児死亡に関する那覇市の調査資料。「なぜ異変を確認できなかったのか」という問いに園長は「呼吸の確認をしていなかった」「余裕がなかった」と記している

 昨年7月に那覇市の認可外保育園(8月に廃止)で、一時預かりされた生後3カ月の男児が心肺停止の状態で救急搬送された後、死亡した事案の発生から30日で半年となった。琉球新報が情報公開請求で入手した市の調査資料からは、この園が人手不足などを理由に安全対策をおざなりにしていた実態が浮かび上がる。市は再発防止策を打ち出すが、実効性を確保できるかが問われている。

 「余裕なかった」

 市の認可外保育施設指導監督基準では、乳幼児突然死症候群(SIDS)予防のため、睡眠中の呼吸などを細かく確認・記録し、あお向けに寝かせることを定めている。この園では男児の呼吸を確認せず、うつぶせに寝かせていた。市の調査資料で、園長は「一時預かりの児童については記録しない習慣だった。あお向けにすると泣く子もいてうつぶせにしていた」と明かしている。

 母親が迎えに来た正午前、男児のおでこは紫に変色し、園長らが体温を測ると34~35度しかなかった。母親が異変に気付き救急車を呼んだが、園長は母親に「体は温かく心臓も動いている」と話した。園長はすぐ異変に気付かなかったことに「呼吸を確認していなかった。乳幼児全体を見ながらせわしなく、余裕がなかった」と釈明。自ら救急車を呼ばなかったことには「大丈夫と思いたかった」と記している。

 この園は1時間当たり数百円という格安料金で一時保育を受け入れる一方、職員を計画的に配置できていなかった。園長は「求人を出したが見つからなかった。人件費も不足していた」とし、運営能力に疑問符が付く。

 行政調査追い付かず

 那覇署は複数の専門機関に依頼するなどし、乳児の死因特定を急いでいる。一般に乳児が亡くなった場合、死因が明らかにならないケースが多いとされ、死因の解明は難航も予想される。同署は死因の特定と併せ、園側の過失の有無も含め調べを進めている。

 市は市内の保育施設に事故防止研修を実施し、指導監督を担当する課に職員1人を新たに配置した。認可外園の睡眠時呼吸モニター購入を補助する予算も市議会で可決された。昨年12月には検証委員会を立ち上げ、再発防止に取り組んでいる。

 保育問題に詳しいジャーナリストで名寄市立大特命教授の猪熊弘子さんは、市の対策について「モニターを導入しても、モニターに任せて誰も見なくなり事故につながることもあり得る。あくまで補助的なもので、大事なのは研修と監査だ」と指摘する。

 認可園は開設時・開設後に行政の厳しいチェックが入るが、認可外は届け出をすれば開設できる。県内では、適正な保育ができているかを確認する認可外園への立ち入り調査が追い付いていない現状もある。猪熊さんは根本的な対策として「行政は認可外園の認可化を進めるべきだ」と話している。
 (伊佐尚記、高辻浩之)