【記者解説】「沖縄が標的にされる」 抑止力一辺倒に疑念の声 <沖縄県民世論調査>


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防衛省

 琉球新報社とJX通信社が実施した世論調査では、南西諸島への自衛隊配備に54.2%が「反対」と回答し、政府の方針に対して強い抵抗感が示された。自衛隊配備に「反対」する理由は「沖縄が他国の標的にされるから」との割合が最も高く、配備強化で抑止力が高まるという政府側の説明が県民に受け入れられていない実態が浮き彫りとなった。

 南西諸島への自衛隊配備については70代の反対の割合が7割に上り、年齢層が上がるほど反対の割合が高くなった。実際の戦争を知る世代ほど軍事力や、沖縄が再び戦争に巻き込まれることへの拒否感が表れた。自衛隊配備強化には賛成する人の中でも反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有には反対すると回答した人も1割いた。

 今月12日に行われた外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)では、政府が昨年12月に閣議決定した安全保障関連3文書を踏まえ、民間用を含む空港・港湾の柔軟な使用を自衛隊だけでなく米軍も含めた2国間協力に発展させることで一致した。対中国を念頭に、日米協力は今後、加速化が見込まれる。

 一方、その影響を受けることが想定される沖縄では、県民の意見を聞く手続きを経ないまま「台湾有事」を念頭にした「最前線化」が進められることへの警戒感が横たわる。政府姿勢と県内世論の乖離(かいり)は進む。

 南西諸島で暮らす人々の命と暮らしを守るため、抑止力一辺倒の安全保障政策の転換と、外交的取り組みに関する国民への情報提供が必要だ。
 (知念征尚)