改訂生徒指導提要について 下條満代(琉球大学教育学部教授)<未来へいっぽにほ>


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下條 満代(琉球大学教育学部教授)

 生徒指導という言葉から何をイメージするだろう。教師が頭髪やピアスなどの身なりや持ち物の検査を厳しい表情で行う「怖い」「厳しい」場面を思い浮かべる方も多いのではないだろうか。

 12年ぶりに改訂された生徒指導提要では「児童の権利条約」や「子ども基本法」に基づき、根拠を伴った支援で子どもの幸福追求や自己実現のための発達を支持する教育活動と位置付けられた。そのため教職員には「子どもへの差別の禁止」「子どもの最善の利益」「子どもの生命、生存、及び発達に対する権利」「子どもの意見」の尊重が求められた。

 体罰やブラック校則などの禁止はもとより、校則をホームページ上に掲載し、子どもや保護者に知らせるほか、校則の運用・見直しに子どもが参画するものとした。つまり、教師が子どもを従わせるという視点の生徒指導から子どもを中心に据え、その発達を支持する視点への大幅な転換が行われたのである。

 そのためには、これまでのような何か問題が起きてから行う課題解決的(reactive)な生徒指導より、子どもたちの心理面や学習面、社会面、キャリア面、健康面の包括的な発達を日常の関わりを通して支援する、常態的・先行的(proactive)な生徒指導にする必要があるというものである。改訂生徒指導提要はこれまでの「怖い」「厳しい」イメージの生徒指導を「子どもの包括的な発達を支持する生徒指導」に導くガイドブックである。

 不安が強く過敏な子どもたちなど、多様な子どもたちが学べるインクルーシブ教育を推進する立場から、これからの生徒指導をサポートしていきたい。