教員のメンタルヘルス対策は「命どぅ宝」基本に 藤川伸治(教職員のメンタルヘルスプロジェクト事務局長)<未来へいっぽにほ>


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藤川 伸治さん(教職員のメンタルヘルスプロジェクト事務局長)

 教員のメンタルヘルス対策についての施策を、県内外の教育委員会に提案する旅が続いている。

 教育委員会によって反応がまったく違う。「他にも重要な課題があるので、メンタヘルス対策など後回し」と面会を拒否される場合すらある。一方で、教育長が「いじめや不登校の解決、学力向上を実現するには、教職員が元気で働ける職場にすること。それがわれわれの役割です。ただ、その方法が分からず悩んでいた。やっと今日、その展望を持てた」と話した例もある。涙が出るほど感動する。

 20年前、東京都教職員互助会三楽病院の精神神経科医師だった故中島一憲医師は、教員の2~3割は専門医の受診を受ける必要がある軽度のうつ症状にある、と警鐘をならした。中島医師の警鐘を真剣に受け止めた教育関係者は極めて少数だ。今でも同様だ。

 琉球新報(1月29日付)は、教職員を守る仕組みである産業医の選任について沖縄は68%、全国最下位だと報じた。産業医は相談者の症状の原因を探り、その原因を取り除くためのアドバイスをしてくれる。職場に問題があれば、相談者の了解を得たうえで、職場の上司に問題解決を促すこともできる。やる気が起こらないなどの症状があったら、信頼できる産業医に早期に相談すれば休職に至ることなく症状を改善できることもある。

 沖縄県は産業医が不足しているという地域事情もあるが、地元に産業医がいなければ県外の産業医を探し、オンライン面談を導入し、成功している事例は山のようにある。教員のメンタルヘルス対策は「命どぅ宝」を教育や行政の基本に据えて実践しているかが問われている課題である。