「幸」みたいな顔して/星野灯 選外佳作・回転する/髙良真実 始まり/喜如嘉悦子<琉球詩壇・2月11日>


社会
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「幸」みたいな顔して 

星野灯(兵庫県)


 

ちゃんと食べれていますか
好物を頬張って
幸せを可視化したみたいな顔を
思い出すたび満たされてしまいます

あなたが頬を丸くするとき
目尻を垂らすのは
あなたの「感情」そのものが
世界の全てであってほしいから

ちゃんと息を吸えていますか
風船みたいな心臓だから
細くなった心が刺してしまわないか
時折あなたの胸の動きを確認してしまいます

あなたが眉間に皺(しわ)を寄せるとき
耳を塞ぐのは
あなたの心臓が割れる音を
聞きたくないから

ちゃんと眠れていますか
毛布にモフリして
少し口角が上がったまま
目を瞑つむっている様子を思い出します

あなたがやさしく目をくっつけるとき
見惚(みと)れてしまうのは
あなたの知らないあなたを
見れる孤独だから


西原裕美・選

寸評

柔らかい言葉で表現されているが、ありきたりになるのではなく、独自の言葉が見られる。


 

選外佳作1

回転する 

髙良真実(東京都)

 

ピースメーカー 装弾数六発
ひかれるようになった日は遠く
恋仲に至らないことが約束されたほど
仲の良かった男の子から教えてもらった
力の象徴(模造品)を片手にもてあそび
くるくる回す

銃を回せば 指はあたたかく痛み始めるが
くるくる くるくる たん
回すのをやめられない
くるくる くるくる くるくる たん
布団の上で、落としても壊さないように
家に帰るとピースメーカーは転んでいる

その名は、相手を殺せば平和が訪れるから
持ちえないものへのよこしまな憧れは
時折燃えないごみの日の存在を浮上させる
燃えないガスを詰めてBB弾をはきだす玩具
ガスボンベには安全な痛みマークがある
くるくる くるくる くるくる たん
銃を捕まえるのは親指がハンマーに触れる時
すぐ撃てるように
かちん
模造品はバネで返事をする

この銃を教えてくれた彼は
かれ、という距離感の端にいる
かちん
わたしの銃は火を吹かない
ピースメーカーはくるくる回る
 


 

選外佳作2

始まり

喜如嘉悦子(浦添市)

 

崩れそうな心 支えている二本の足
どうして こんなにも
善い人に なりたがるのだろう
自分が ドンドン 消えていく
日が沈むと 私の心も沈み
私は 私にまで ウソをつく
「偽りの心で 生きる事なかれ」と
神様は 言った

ムズカシイ宿題 出せない私
辛い事があると
どうして 忘れてしまうのだろう
側にいる 優しい人達の事を
いつも 「大丈夫」と 言ってくれる
言葉は 生きている あたたかい
花は 微笑み 風は 囁く
「あなたにしか ない物が あるよ」と
光が 口の中に 入ってきて
思わず 呑みこんだ

やっと 私を 抱きしめる
踏んだ心が 立ち上がる
どんな自分も 受け入れて 前を向く
皆と 生きる しあわせ
ありがとうの言葉は 眠らない
自由でありのまま そして 信じる事
崩れそうな心 支えてた 二本の足が
一歩…又 一歩と 歩き出している