【深掘り】なぜ?浦添・子育て支援センターの廃止 市議会決議の経緯、市が主張する「こども園で支援」の課題とは


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
子育て支援拠点事業の廃止の見直しを求める決議案について協議する市議会福祉委員会の委員ら=6日、浦添市議会

 【浦添】浦添市が乳幼児と保護者の相互交流や子育てに関する相談、援助などを行う「地域子育て支援拠点事業」を担う民営の子育て支援センター3カ所を廃止し、市直営1カ所に集約する方針を示していることに、施設利用者から反発が広がっている。保護者らは市に対して、センターの存続を求める500筆超の署名を提出するなど働き掛けを強めている。一方の市側は市内24カ所の認定こども園が実施する「子育て支援事業」が受け皿になると判断しており、保護者の思いと市の主張との隔たりは大きい。

 

■市議会の決議

 拠点事業を巡っては7日の市議会臨時会で、市の廃止・集約方針を認め、子育て支援事業の拡充を求める決議を与党の賛成多数で可決した。与党側は市の対応を「子育て施策を後退させるものではなく、事業の選択と集中である」(上原聖也議員)として擁護する。一方、野党側が提出した拠点事業廃止の見直しを求める決議は反対多数で否決された。

 市議会の福祉委員会は当初、こども園を視察した結果として、専用スペースの整備や0歳児の受け入れ環境など、拠点施設の受け皿としての体制が十分ではないと判断し、拠点事業廃止の見直しを求める決議案の「全会一致」による提案を確認していた。

 しかしその後、委員会に所属していない与党の一部が決議案に反発、臨時会前日に開かれた福祉委員会の採決は可否同数となり、最終的に公明党の下地秀男委員長の裁決で決議案は否決された。下地氏は理由について「拠点施設を残したいとの思いは今でもあるが、全会一致にならない以上、決議には賛成できなかった」と述べた。

子育て支援事業の拡充を求める決議案に対する市議会採決の賛否一覧。グレーは退席か欠席

 

■拠点事業と支援事業

 子育て支援センターが担う子育て支援拠点事業と、こども園が担う子育て支援事業は共に保育施設に通っていない親子が対象で、事業内容も親子の交流の場提供や子育てに関する相談、援助の実施など重なる部分が多い。ただ、実施事業が明確に決まっている拠点事業と違って、こども園の場合は園の裁量によって取り組む事業が異なる。また、支援センターが週5日開くのに対し、こども園の多くは週3日の受け入れとなっている。

 さらに、こども園の場合、駐車場や専用スペースの確保などに課題があるほか、通常保育との兼ね合いで、支援事業に人員を割きづらい側面もある。市はこども園それぞれが特色ある子育て支援事業を行うことで「市全体の質向上を図る」としているが、拠点事業関係者からは「そもそも別事業であり、廃止する必要性が分からない」との疑問の声が根強い。

 県内の子育て支援センターの職員らでつくる、沖縄・地域子育て支援センター連絡協議会副会長の嘉陽理子さんは「拠点施設は保護者のよりどころとして命を守ってきた場所だ。拠点施設を残しつつ、子育て支援策を広げるのが本来あるべき姿だ」と語った。 (吉田健一)