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「甲子園に行くぞ」思った瞬間目覚める…コロナで夢の舞台を失った高校球児はいま 沖縄コロナ初確認から3年


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
初優勝を決め、喜びを爆発させる八重山高メンバー=2020年8月2日、名護市のタピックスタジアム名護

 新型コロナウイルスの感染者が県内で初めて確認されてから14日で3年となった。スポーツに情熱を傾けてきた生徒たちは、目標としていた夢舞台を感染対策という理由で失い涙をのんだ。流行が小康状態となり日常を取り戻す中で夢を描き直す人がいる。

 「甲子園へ行くぞ」。高校野球の県大会で八重山高校が優勝し、主将だった内間敬太郎さん(20)=金沢学院大2年=がそう思った瞬間、夢から目が覚める。約2年半前の夏、新型コロナウイルス感染拡大の影響で夏の甲子園大会が戦後初めて中止となった。あれから時間がたっても内間さんやほかメンバーは、奪われた夢の舞台が忘れられない。「このままでは終われない」と夢を追っている。

 2020年8月2日、タピックスタジアム名護で行われた県独自大会の決勝戦。県の緊急事態宣言で無観客だったが、八重山とKBC未来による熱気があった。4―2の九回裏2死、最後の相手打者を一ゴロに打ち取り、八重山の歓喜の輪ができた。夏の大会では初の栄冠となった。内間さんは「うれしかった。周囲への感謝が改めてできた場面でもあった」と振り返る。

「二十歳を祝う式典」で再会した八重山高野球部メンバー=1月4日、石垣市内(提供)

 3年生21人の多くが石垣島で生まれ育ち、中学で全国大会も経験した。「このメンバーで甲子園へ行ける」(エース砂川羅杏(らいあん)(20)さん=共栄大2年)と信じていた。だが、夏の大会に懸けたがコロナで夢が断たれた。皆の気持ちは折れたが、マネジャー波照間早希さん(20)=琉球大2年=が「本当にそれでいいの?」と内間主将に働きかけた。これをきっかけに、チームは奮い立った。

 卒業後は県外大や専門学校といった別々の道へ進んだ。副主将だった下地寛太郎さん(20)=共栄大2年=は「落ち込んだ時、当時の動画を見て頑張っている」と語る。一方、甲子園へ行けなかったことは心残りだ。

 内間さんは将来、母校で教師になり監督として甲子園を目指している。

 また甲子園出場できなかった全国の球児を中心に「あの夏」を取り戻す計画が昨年始動し、チームとして参加意向も示している。「もう一度あのチームで集まり、甲子園で野球がしたい」と内間さん。八重山ユニホームが躍動する場面を夢で終わらせたくない。
 (金良孝矢)