戦中・戦後の苦難1冊に 夜間中学スコーレ、生徒の体験まとめる


この記事を書いた人 志良堂 仁
珊瑚舎スコーレ夜間中学校の生徒たちの体験をまとめた「まちかんてぃ!動き始めた学びの時計」

 那覇市の学校NPO法人珊瑚舎スコーレ夜間中学校(星野人史校長)が、戦後の混乱と貧困で義務教育を受けられず戦後60年以上たって同校に通う生徒らの戦争・戦後体験の聞き書きをまとめた本「まちかんてぃ!動き始めた学びの時計」(高文研)を出版した。5日から県内の書店で販売される。

 珊瑚舎スコーレ夜間中学校は2004年4月にスタート。その年から生徒の体験をスタッフが聞き書きしてきた。本には1926年~51年生まれの58人(女性53人、男性5人)の体験が収められている。ほとんどが学齢期に戦争、戦後の混乱期を過ごしており、体験からは戦争や貧困が子どもに与える影響が浮かび上がってくる。
 戦後の混乱の中、両親が死亡し学校に行けなかった33年生の男性は、聞き書きに「無学ですと社会に出て困ります。勉強をして、同じ人間としてきちんと肩を並べて歩きたいのです。戦争で亡くなった人も、生き残った自分たちも戦争の犠牲者です」と語っている。
 生徒たちの多くは学べる喜びを口にする。41年生まれの女性は「たえず学歴ではなく学校に行きたい、学びたいと思い続けてきました。自分は何のために生まれてきたのか。あと何年生きるか知りませんが、残された時間を自分のために使いたい」と話している。
 聞き書きしてきた遠藤知子さん(64)は、義務教育を修了していないため職業選択の幅が狭まり、年金の少なさにつながっていることを挙げ「『戦後70年』と言われるが、生徒たちの体験を聞いていると、戦争の影響は長く続いており、戦争に『後』はないと感じる」と強調した。
 「まちかんてぃ!動き始めた学びの時計」は1836円(税込み)。

戦後の混乱で学校に行けなかった高齢者らが学ぶ珊瑚舎スコーレ夜間中学校=5月28日、那覇市樋川
まちかんてぃ!  動き始めた学びの時計
学校NPO法人 珊瑚舎スコーレ
高文研
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