基地内で元夫から家庭内暴力(DV)を受けた女性のケースからは、日米の法制度の違いや基地内支援機関から十分な支援を受けるにはハードルが高いことが浮き彫りとなった。県は情報のギャップを埋めようと基地内外の支援機関の連携を深める「国際家庭相談ネットワーク構築事業」を実施するが、連携構築はまだ道半ばだ。
米国では自分の罪を認めて自分の処分を軽くしてもらう司法取引が広く採用されており、一般刑法でも軍法でも司法取引が日常的に行われる。対象犯罪も指定されていない。今回の女性の事例のように、被害者の意向にかかわらず合意されることもある。
日本では「他人」の犯罪解明に協力する見返りに自分の刑事処分を軽くしてもらう司法取引制度が導入されている。贈収賄や独禁法、薬物・銃器関連など主に組織犯罪を対象とする。
県の調査によると、基地内には海兵隊と空軍それぞれにDVや児童虐待などに対応する「ファミリーアドボカシープログラム」(FAP)があるほか、性暴力発生時の被害者支援を行う「性犯罪予防プログラム」(SAPR)が存在する。
県は米側のFAPとSAPRと、児童相談所や性暴力被害者ワンストップ支援センターなどとの連携を深めようと、定期的に双方機関を招いた会合を開催。今後、双方の支援機関でメール連絡をすることを合意した。
将来的には基地内でDVを受けた人が基地の外の支援機関の避難所に保護されたり、基地外で虐待に遭っている子どもがいれば児相で迅速な保護につなげたりする仕組みの構築を目指している。
県青少年・子ども家庭課の担当者は「初めは基地内にどのような支援機関が存在するのかさえも分からなかった。言葉の壁があるので、まずは比較的翻訳が容易なメールでやりとりを始め、連絡形式のフォーマットを決めたい」と述べた。
(梅田正覚)