【識者談話】米兵によるDV支援のカギは 沖縄県と基地内外の機関で連携を(松崎暁史弁護士)


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松崎 暁史弁護士

 日米の刑事司法制度は大きく異なる。日本の検察は有罪にできる犯罪に限って起訴する傾向にあるが、米国では成立し得る犯罪をなるべく起訴する傾向にある。起訴した犯罪を全て裁判で事実認定すると審理が長期化し、検察も裁判所もリソースが足りなくなる。このため刑事事件の多くで司法取引が行われる。

 米軍の軍事法廷でも司法取引は行われている。軍事法廷では司令官が司法取引を決定する権限を有する。結果的に被害者の意に沿わない司法取引が行われる場合もままある。

 日本でも司法取引に似た制度が2016年に導入されたが、組織犯罪を主な対象としていて実績が少なく、一般的にはあまりなじみのない制度となっている。米国の司法取引とは大きく異なる。

 軍人の家族がDVを受けるとファミリーアドボカシープログラムという基地内の支援プログラムを利用することができる。ただ、日本人妻の場合は言葉の壁もあって基地内の支援制度にアクセスしづらい事情もある。

 基地内の支援制度の情報をきちんと入手できる環境が整っていないのが課題だ。県が基地外と基地内の支援機関の連携を目指して実施する「国際家庭相談ネットワーク構築事業」で情報発信を進めることを期待している。