彭さんたちのグループには「救援任務」と呼ばれるサポート体制がある。グループのメンバーが事故にあったり急病で困ったりしたとき、さまざまな方法で問題解決に寄り添うのが主な任務。忘れ物や遺失物を取りに行くのも任務のひとつだ。今年もすでに20件近い遺失物の回収を行っている。
彭さんたちが出動する条件は二つ。なくした本人が手を尽くし、ホテルなりタクシー会社なりに連絡して遺失物の所在を特定すること。彭さんやスタッフが担うのは受け取りと落とし主への郵送のみだ。二つ目は、遺失物を受け取ったら、その気持ちを台湾の児童福祉施設への寄付として形にすること。その額は問わない。
メンバー同士の助け合いもある。中でも奇跡とも言える出来事が2018年、古宇利島で起きた。ガーリックシュリンプと「恋の島」として台湾でも人気の島だ。5月のある日、ハートロックを訪れた女性は夜ホテルに戻って、着けていたはずのダイヤの指輪がないことに気づいた。夫からもらった大切な指輪だが、帰国の日は迫り、取りに行く余裕はない。そこで、記憶をたどって遺失場所を特定し、地図情報や写真も上げてグループに協力を呼び掛けた。
多くのコメントが寄せられたが、実際に島まで探しに行ったメンバー一家が向かったのは遺失から5日後のこと。探しに行った本人さえ「あるわけはない」と思っていたが、指輪はまさに落とし主が特定した場所であっさり見つかった。回りがあっけにとられて見ている中、騒動は一家の歓声と大笑いの中で幕を閉じたのだった。
(素材提供・沖縄彭大家族・彭國豪、聞き書き・渡邉ゆきこ)