【寄稿】芸磨き持ちネタ増やして 二つ目昇進の意義 知花園子氏(落語イベンター)


社会
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前座時代の金原亭杏寿=1月9日、糸満市のシャボン玉石けんくくる糸満

 11日に二ツ目に昇進した金原亭杏寿さん。二ツ目昇進とは、入門した落語家志願者が前座修行を終え、晴れて一本立ちをするということである。師匠方の着物を畳み、お茶を汲む。それらの下働きから解放され、ようやく「落語家」を名乗れる。だが、ここからが正念場だ。

 真打ちまでの道のりは二ツ目になって10年ほど。色んな師匠に稽古をつけてもらい、芸を磨き持ちネタを増やせるか。持ち前の度胸と暗記力で色んな噺(はなし)に挑んでほしい。千人以上いる落語家の中でいかに観客を魅了し、一人でも多くお客さんを獲得できるかも重要だ。県内でタレント活動をしていた杏寿さんはすでにファンがついているのは強みである。特に落語に興味がなかった人も、二ツ目昇進のニュースを知っていて認知度も高いと感じた。昇進で、初めて杏寿さんの存在を知った県外の人たちも、明るく華のある雰囲気にザワついた印象を受ける。落語を聞いてもらう前に、名前を知ってもらう、興味を持ってもらうことも芸人にとって大切だ。

 あと3年で真打ちになる県出身の立川笑二さんは、「所属団体が違うのでこれまではなかなか一緒の落語会に出ることはなかったが、口調が良く、明るい落語を演(や)っているという良い評判を聞いていた。同じ県出身者の落語家としてこれからも切磋琢磨(せっさたくま)していきたい」とエールを送った。

 笑二さんは沖縄の故事を取り入れた後継話「仲順大主(ちゅんじゅんうふしゅ)」を創作していて、沖縄の歌を取り入れるなど工夫を凝らしている。本寸法(古典落語)はもちろん、地元の情景が見える自作ネタも持つと幅が広がって良い。杏寿さんも「沖縄の話も落語にしたい」と語っているようなので、ぜひ挑戦してほしいところだ。今年、県出身の立川縄四楼さんも二ツ目に昇進することが決まっている。前座見習い中の元お笑い芸人もいるので注目したい。

 杏寿さんは落語だけでなく、映画やドラマなど、他方面で活躍するだろう。色んな経験をし、それを糧にして、大きく羽ばたいてほしい。
 (落語イベンター)