【動画】母国ウクライナ思い涙…「平和の音色」避難者の支えに 沖縄に救済協会、つながる場求め


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有泉芳史さん(手前)のチェロの演奏を聴くウクライナ避難者のボロディミルさん一家=21日、宜野湾市

 2017年から沖縄に住むウクライナ出身のアラ・コバルチュークさん(48)と比嘉啓勝さん(48)夫妻=沖縄市=はロシアによる軍事侵攻後の22年3月、「沖縄ウクライナ難民救済協会」(OURRS(アワーズ))を設立した。ウクライナ現地の人が他国に避難する支援をするほか、沖縄に避難しているウクライナの人たちの生活面をボランティアでサポートし、避難者にとって頼れる存在となっている。

 ロシアの軍事侵攻から1年を前に21日、宜野湾市の県営住宅の部屋にチェロの音色が響いた。比嘉さんが、県営住宅に住むボロディミルさん(65)一家に聴いてもらおうと企画した。知り合いのチェロ奏者の有泉芳史さん(46)=山梨県=に依頼し実現した。

 「アベマリア」「G線上のアリア」…ウクライナの平和を祈る音色に、ボロディミルさんの妻のオレーナさん(62)は涙をぬぐった。「毎日、多くの人々が血を流して死んでいく。とても胸が痛い」

 一家は東ウクライナのドニプロに住んでいた。母国を離れて約1年。チェロ演奏後、アラさんらと、戦争の終わりが見えない状況について話し込んだ。オレーナさんが望むのは「ウクライナが勝利し、戦争が止まること」。領土を取り戻し、国を再建する願いは募る一方、戦争長期化の懸念で「出口が見えない」と吐露する。ボロディミルさんは「米国やロシア、中国、インドなど全ての国が同じテーブルで話し合ってほしい」と望む。

 アラさん夫妻は、自費で購入した中古ワゴン車で教会や桜を見に連れて行くなどボロディミルさん一家を気遣う。

 夫妻が中心メンバーのOURRSは現在、避難者7人をサポートする。保証人となり、日本語が分からない避難者を支える。

 国や県から家賃や生活費、医療費などの支援は行き届いているものの、避難者同士のつながりが少ないとして、行政がそうした場をつくることも求めた。
 (中村万里子)