「本質はマネーゲームで国防問題ではない」沖縄の無人島巡る騒動の舞台裏 関係者に独自取材


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中国人女性のSNSへの投稿で波紋を広げている屋那覇島(提供写真)

 中国人女性のSNS投稿がきっかけとなった沖縄北方の無人島を巡る騒動。島は2021年2月に中国ビジネスコンサルティング会社が買収したが、その約8カ月前には、この会社の経営陣に名前を連ねていた人物が琉球新報の取材に島の売買を巡り、「競売入札での不正があった」と訴えていた。国会審議でも取り上げられるなど思わぬ波紋を広げているが、一連の不動産取引の経緯を知る関係者は、「国防の問題などではない。沖縄の離島がマネーゲームに使われたというのが本質だ」と指摘した。

 「経緯が不可解だ。関係者の告訴も考えている」。20年7月、本紙記者の前でこう訴えていたのは、横浜市に拠点を置く「一般財団法人」の専務理事、営業部長の名刺を持つ2人の男性だ。

 今回、騒動になっている屋那覇島の土地の一部を所有する不動産会社(当時)の債権者の「代理人役」を名乗っていた。男性2人は、その日に那覇地方裁判所名護支部で行われるはずだった競売入札が直前で中止になったことに、「何らかの不正があったのではないか」と訴え、首相経験のある政治家との関係を強調しながら、競売中止の判断に関わった裁判官への処分を求める考えも示していた。

 屋那覇島の土地を巡る状況が一変したのは、それから約8カ月後の21年2月。登記によると、同月に、土地の所有権は、「日中間ビジネスのサポート」を掲げる東京都港区のコンサル会社に移った。この会社には、「財団法人の専務理事」として本紙取材に応じた男性が、20年10月から22年2月まで取締役として名前を連ねており、両者は接点があったものとみられる。

 島の一部土地を所有していた不動産会社の奥茂治取締役は、「彼らが土地の売却に関わったのは確かだ」としながらも、「売却先の企業と関係があるとは知らなかった」と戸惑いを隠さない。

 国会審議では、安全保障上重要な施設の周辺や国境離島の外国人への土地売買を規制する「土地利用規制法」との関連での議論も噴出している。

 こうした点も踏まえ、奥氏は「報じられているような中国側への転売の話は想定していなかった。離島防衛の議論はピントがずれている」とし、監査役を通じて経緯説明を求めるとしている。琉球新報は男性2人に改めて連絡を試みたが、23日までに応答はなかった。
 (安里洋輔、稲福政俊)