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政府、海底整備も検討 民間港湾への視線 管理者自治体の判断焦点<自衛隊南西シフトを問う>20


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
自衛隊が契約する民間船舶の利用を想定し、県内の港湾についてまとめた防衛省・自衛隊の2013年度資料。「平良港」「石垣港」「祖納港」が列記されている。

防衛省・自衛隊は、少なくとも2013年度には県内の民間港湾に着目して情報を収集していた。政府を挙げて自衛隊や米軍の港湾利用を拡大しようとする中、過去の戦争の反省を基にした港湾法の意義を踏まえ、管理者の県や石垣市、宮古島市がどう判断するかが焦点となる。

軍事評論家の小西誠氏が情報開示請求で入手した「自衛隊の機動展開能力向上に係る調査研究」の13年度報告書には、県内の港湾に関する情報が記されている。特に宮古島市の平良港と石垣市の石垣港、与那国町の祖納港については水深や岸壁長、特徴、入港可能な船舶の大きさなどをまとめた表が載っている。

自衛艦の大きさはまちまちだが、輸送艦で水面からの深さが6メートル、大きな護衛艦で7.1メートル。自衛隊が契約する民間船舶も同程度とみられる。弾薬や燃料を満載すればより沈み込むが、港の水深が10メートル程度あれば「安心」(自衛隊関係者)と言う。県内で10メートル以上あるのは、平良、石垣、那覇、中城の4港だ。

与那国島の祖納港は最大水深5.5メートルで、入港は小型の掃海艇や輸送艇などに限られる。

政府はすでに条件が整っている港の使用を模索する一方、条件が合わない港も自衛隊が使えるように海底を掘り下げるなど整備も検討している。いずれの方法も管理者の県や市の同意が必要だ。防衛省関係者は「安保3文書に書き込まれて具現化の段階に入ったが、自治体との交渉は簡単じゃない」と語った。

県内41港のうち38港が県管理だ。残りは石垣市が石垣港、宮古島市が平良港、那覇港管理組合が那覇港を管理している。

県の島袋善明土木建築部長は24日の県議会で「公物管理の観点から支障をきたす恐れが高い場合を除き、許可が適当」と答弁した。県担当者は施設利用の公平な取り扱いを定めた港湾法13条を根拠に「自衛隊も民間船舶も分け隔てなく扱う必要がある」と説明した。

だが本来は港湾法で地方自治体に委ねられた権限は大きい。名古屋学院大の飯島滋明教授(憲法学)は「戦前は国が港湾管理権を一元的に有していたことが戦争遂行を容易にした。その反省を踏まえ、自治体に強い権限を持たせることで、国に歯止めをかける憲法的意味がある」と説明した。

神戸港(兵庫県)を管理する神戸市は、外国軍艦に核不搭載の証明書を提出しなければ入港を認めない「非核神戸方式」を採用している。飯島教授は「行政には平和憲法を尊重する義務があり、地方自治体は住民が危険にさらされる恐れがある場合には入港拒否を判断できる」と指摘した。

政府は地元の出方を慎重に見極めながら、公共インフラの利用拡大を試みている。その成否は県や市の判断に委ねられている。

(明真南斗、武井悠)

連載「自衛隊南西シフトを問う」

2010年の防衛大綱で方向性が示された自衛隊の「南西シフト(重視)」政策の下、防衛省は奄美、沖縄への部隊新編、移駐を加速度的に進めてきた。与那国、宮古島に続き、今年は石垣駐屯地が開設される。22年末には戦後日本の安全保障政策の大転換となる安保関連3文書が閣議決定され、南西諸島の一層の軍備強化が打ち出された。南西シフトの全容と狙い、住民生活への影響など防衛力強化の実像に迫る。

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