教職員組合、多忙化で組織率低下 県との交渉に支障も 加入せずSNSで声上げる教員も


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県教育委員会(左側)と定年年齢引き上げに関する交渉をする沖教組・高教組=2022年11月(沖教組提供)

 教職員の働く環境を改善するため、現場の声を伝える役割を担ってきたのが教職員組合だ。しかし、近年は教職員の多忙化で組織率低下の課題を抱える。一方、教職員組合には加入していなくても、インターネットの交流サイト(SNS)で声を上げる教員らもいる。

 高校や特別支援学校の教職員が加盟する高教組は昨年12月、各校の教員不足の状況について、アンケートを実施した。16校で23人の欠員(12月1日時点)が確認された。

 松田政旗書記長は「現場は疲弊している。のどから手が出るほど、早く必要な教員数を確保してほしい」と強調する。県教委との交渉では、教員確保の観点から教職員の候補者選考試験の受験年齢制限に反対し、年齢制限の緩和を実現させた。元教員も含めて教壇に立てる人材を登録する「人材バンク」制度の実現も求めている。

 一方、若い教員らの新規加入者は減少している。ピーク時は8~9割に達した組織率は近年、5~6割まで下がった。組織率低下に歯止めをかけるために模索中だ。

 無料通信アプリの「LINE(ライン)」のグループ機能を活用し、活動を可視化し、組合のメリットに理解を広げようと試みている。

 小中学校の教職員が加盟する沖教組も、組合を巡る環境の変化を感じる。上原邦夫中央執行委員長は「業務過多で、組合活動ができない人が多くなった。声を上げたくても、上げる余裕がない」と話す。組合員の声をアンケートで集めて県との交渉に活用したいが、「あまり声が集まらないことも増えた」と吐露する。

 組合活動とは別にSNSでつながりを広げる教職員たちもいる。「SNS上で、つらいと感じていることを書き込む先生たちがとにかく多い」と話す上原委員長。ただし、SNS上で集まっても、県との交渉の場にはつけない。「教職員人事評価システムの導入で、管理職の評価を気にして声を上げづらいと感じる先生も多い。SNSに現場のつらさを投稿する背景には、そういった事情もあると思う」

 県との交渉権がある組合と、SNSの発信力という互いの利点を組み合わせて教育行政を動かしていく必要性も上原さんは感じている。「当事者が声を上げなければ何も変えられない。工夫しながら声を上げ続けることが大切だ」と話した。
 (嘉数陽、古堅一樹)