特別支援学級の増加と教員不足 下條満代(琉球大学教育学部教授)<未来へいっぽにほ>


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下條 満代(琉球大学教育学部教授)

 県教育庁は次年度の公立小中学校の学級編成について、1学級当たりの児童生徒数を増やす可能性を認めたという。昨今の教員不足に起因しているが、教員不足の原因の一つに特別支援学級の増加があると考えられる。2007年度からの10年間で児童生徒数が2.4倍になるなど全国的に課題となっている。

 特に自閉症や場面緘黙(かんもく)を対象とする情緒学級の在籍者数が急増し、沖縄ではこの10年間で12.5倍になった。現在沖縄では、通常学級の児童生徒の上限を小1~小2では30人、小3~中3では35人としている。特別支援学級の児童生徒数は1学級当たり8人であるため、全国平均の何倍も特別支援学級が増加した本県は、特に教員不足が深刻になっていると考えられる。

 そもそもなぜ本県は、他県に比べ何倍もの情緒級対象の児童生徒が存在するのであろうか。自閉症や場面緘黙(かんもく)の先行研究による発現率から、半数近くは情緒学級対象ではない可能性がある。通常学級1学級当たりの児童生徒の人数を増やすことは、教員の働き方改革に逆行し教員と児童生徒の学校におけるQOL(生活の質)を低下させることにつながる。県教育庁には多様な子どもに寄り添った視点で学級経営や授業づくりを見直し、誰もが安心して学べるインクルーシブ教育を推進することが求められる。そうすることにより、通常学級で学ぶことができる児童生徒を本来の学級に戻すことができる。

 国は2025年度までに小学校のすべての学年で35人学級の実現を目指している。さらなる混乱が危惧される中、インクルーシブ教育の実現こそが急務である。