28日の県議会2月定例会一般質問では、玉城デニー知事ら県当局と野党らの間で、政府が進める南西地域の防衛力強化、県が差別的言動(ヘイトスピーチ)防止を目的に提案している「県差別のない社会づくり条例」を巡り激しい論戦が交わされた。
この日、冒頭で質疑に立った座波一氏(沖縄・自民)は「抑止力と防衛力を持ってこそ、対等な対話ができる」と述べ、防衛力を強化する必要性を強調。県が地域外交を強化する方針を示していることについても、専門家の言葉を引用し「(政府と異なる)誤ったメッセージを海外に伝える危険性がある」と懸念を示した。
これに対し玉城知事は、最低限の防衛力は必要だとの姿勢を示しつつ「抑止力の強化がかえって相手国の抑止力を高めさせてしまう危険性もある」と述べ、過度な防衛力増強の動きに警戒感を示した。地域外交についても「国の方針についてはさまざまな意見があり、地域それぞれの捉え方がある」などと述べるにとどめた。
条例について、照屋守之氏(無所属)は「われわれもこういう条例ができたら気を使って言わないといけなくなる。県民の言動を抑える危険性はないか」と言論の自由の抑制につながらないかとの視点で批判した。
玉城デニー知事は「表現の自由を制限するものではない。不当な差別的言動はいけないという社会を作ろうとの理念型の条例として呼びかけていく」と述べた。
県はインターネットで県民に対する非難や誹謗(ひぼう)中傷が散見されることから、差別解消に向けた対象に「県民であることを理由とする不当な差別的言動」を盛り込んだ。
これに対し、座波氏は「高校生が失明した事件がネット上で炎上した。こういったものをすぐ沖縄差別に結びつけるのは非常に危険だ。ヘイトの前段階ではむしろ知事の政治姿勢を批判する声が圧倒的に多い。それが(ヘイトスピーチに)起因していると言える」などと持論を展開した。
玉城知事は「政治家が非難や称賛されることは理解している。個別具体的な状況を述べているものではない」と述べた。
(知念征尚、梅田正覚)