ボケもツッコミも手話で 「劇団アラマンダ」手話劇に笑顔満開 通訳なしで団員が演じきる


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爆笑の手話コメディーを繰り広げる劇団アラマンダの大屋あゆみ(左端)ら=2月23日、那覇市ぶんかてんぶす館テンブスホール

 手話と一緒に演じる「劇団アラマンダ」の舞台「食堂アラマンダ~跡取り息子とおふくろの味」が2月23日、那覇市ぶんかテンブス館テンブスホールで開かれた。アラマンダは、両親が聴覚障がいを持つ大屋あゆみ(吉本興業)が2018年に旗揚げした劇団。見ても聞いても、聞こえなくても楽しめる心温まる手話コメディーが、客席に満開の笑顔を咲かせた。

 あゆみ(大屋)が店長を務める食堂アラマンダには、今日も常連客のしょう(マエショー)や観光客が訪れて、平和な時間が流れていた。しかし、家を出たっきり戻らない店の跡取り息子を探す、怪しい2人組の男がやってきて、不穏な空気が漂い出す。

 アラマンダが旗揚げした年に開催した初公演は、手話通訳士による同時通訳もあり、演者による手話は一部だった。その後、コロナの影響もあり長尺の作品はできずにいた。ようやく迎えた今回の舞台は通訳を用いず、演者自身がせりふを言いながら手話をした。

 物語は吉本興業ならではの、吉本新喜劇をほうふつとさせる人情あり、サプライズありのコメディー。演者はボケにも突っ込みにも手話が伴うぶん、せりふのスピード感や互いの間などが、通常の芝居より格段に難しかったことだろう。しかし、団員は手話を意識し過ぎて棒立ちになったり、せりふを棒読みにしたりすることなく、テンポ良く演じきった。最初から最後まで出ずっぱりだったピーチキャッスルのマエショーを筆頭に、団員の手話の上達具合に驚かされた。

 舞台あいさつであゆみは「たくさんの観客が集まってくれてありがたい。稽古のたびに(団員の)手話を覚えるスピードが上がっていて、(感動で)涙をこらえるのに必至だった。みんなに感謝です」と語った。また、劇団の厳しい財政事情を話した上で「いずれは全国公演が夢」とし、協力金の提供も呼びかけた。

 あゆみの父・大屋初夫さんが食堂の客役で登場し、娘と一緒に舞台を盛り上げる一幕もあった。初夫さんは終演後、劇が「面白かった」と両手で何度もグッドマークを作った。満面の笑みに、娘への愛と、活動を誇りに思う気持ちがあふれていた。
 (藤村謙吾)