今なお賛否割れ 住民投票の可否は法廷闘争へ 石垣島への自衛隊配備とその経緯


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 2010年の防衛大綱で「南西シフト(重視)」政策が示される中、防衛省は15年11月、沖縄県石垣市平得大俣への陸上自衛隊配備計画を市に正式に打診した。

 防衛省は17年5月に施設配置案を提示するなど配備計画を進展させる一方で、軍事基地のない島内は「抑止力」の獲得と「標的化」への懸念で揺れ、配備への賛否は割れた。

 一方で中山義隆石垣市長は配備に一貫して協力的な姿勢を示し、16年12月には「配備に向けた諸手続を開始することを了承する」と表明。陸自配備計画が最大の争点となった18年3月の市長選では賛否を明確にせずに選挙戦に臨み、配備に反対する候補らを破って3選を果たした。

 配備に反対する予定地周辺住民との対話を重視する考えを示していたが、周辺住民の反対が根強かった18年7月に配備の受け入れを正式に表明。同年9月の市議選で、配備予定地の市有地を沖縄防衛局へ売却するのに必要な過半数の議席を市政与党が確保し、配備に向けた政治的な環境整備が着実に進んだ。

 一方で、島内で賛否が割れる状況は変わらず、18年12月には市住民投票を求める会が有権者の3割を超える1万4263筆の署名を集め、平得大俣への陸自配備の賛否を問う住民投票を直接請求した。だが一部を除く与党の反対で請求は否決された。現在は法廷で実施の可否が争われている。

 沖縄防衛局は19年3月、取得した一部民有地(約0・5ヘクタール)で建設工事に着手。18年改正の県環境影響評価条例は20ヘクタール以上の土地で土地造成を伴う事業を環境影響評価(アセスメント)の対象にしていたが、経過措置として同年度中に一部でも事業着手すると対象から除外されたため、「アセス逃れ」と指摘された。

 着工から1年後の20年3月には、市議会が市有地の売却を可決。その後、市内3カ所での隊員宿舎建設も含めて工事は急ピッチで進んだ。今年3月16日に部隊配備が完了する。

(大嶺雅俊)