野山分け入り、グスク調査 東恩納寛惇賞の當眞嗣一さん 戦争遺跡記録の大切さ訴え


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東恩納寛惇賞の受賞を喜びつつ考古学の魅力を語る當眞嗣一さん=西原町(大城直也撮影)

 沖縄各地のグスクを踏査するグスク研究の第一人者で「戦跡考古学」を提唱するなど沖縄の考古学を先導してきた業績が評価され、第40回東恩納寛惇賞に選ばれた考古学研究者の當眞嗣一さん(78)。受賞の知らせに「本当に驚いた」と話した。

 かつての西原村の生家一帯は戦後、米軍の西原飛行場になった。高校生の頃に開放された跡地を祖父と共に耕すと、屋根瓦や食器などのかけらが出てきたことから考古学に興味を抱き、琉球大で学んだ。多和田眞淳氏、高宮廣衞氏らの指導を受けて発掘調査に関わった。

 野山に分け入り、県内に200以上あるグスクを一つ一つ歩いて形状を確認して「縄張り図」(平面図)を描いてきた。多くのグスクは戦いに備え、防御に秀でた特質があることを明らかにした。現在もフィールドワークを続けている。

 恩納村の仲泊遺跡の発掘にも携わった。同遺跡は全県的な保存運動が広がり、道路計画が変更され現地保存が実現した。

 「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の世界遺産登録に向けた業務に総括責任者として携わった。「戦跡考古学」も提唱し、戦争遺跡を記録する大切さを訴えてきた。

 「グスクの話をすると戦に結びつく」と語る。ウクライナで戦争が続いていることを挙げ「戦乱で血を流した歴史の上に平和がある。石垣を築き、防御しなければならなかった時代とは違う。人類の英知の結集が平和だということを、グスクが教えてくれる」と歴史の教訓に学ぶ必要性を強調した。

 (宮城隆尋)


 賞の選考委員は赤嶺政信琉球大名誉教授、豊見山和行琉球大教授、赤嶺守名桜大大学院教授、上原靜沖縄国際大名誉教授が務めた。田里修沖縄大名誉教授は欠席だった。