受刑米兵の移送協議、米の要求に日本前向き 静岡での3人死傷で禁錮刑


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 日米両政府が、2021年5月に静岡県富士宮市で3人を死傷させたとして自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪で禁錮刑の判決を受けた米海軍兵について、米国への移送の可否を協議していることが分かった。複数の外交筋が5日、明らかにした。米議会の一部には不当な拘束として早期移送を求める声があり、拘束が長期化すれば日米関係に亀裂が生じかねない事態となっている。

 米兵は横須賀基地に所属していたリッジ・アルコニス受刑者(34)。一審判決によると21年5月、運転中に眠気を催して飲食店駐車場に突っ込み、富士宮市の男女2人を死亡させた。当時は公務外で、富士宮署に現行犯逮捕された。昨年7月に禁錮3年が確定した。

 国際受刑者移送法は、服役中の受刑者を本国に移送して服役させる手続きを規定。本人の申し出や本国の要請などに基づき、法相が判断する。

 外交筋によると、移送は米兵の家族が米議会やホワイトハウスに働きかけた。バイデン大統領も関係部署に対処を指示。日米の司法、外交当局間で協議している。受刑者と遺族の示談が成立しており、海軍内で勤務態度が評価されているとして日本政府内にも移送に前向きな意見がある。遺族や国内の感情も踏まえ、慎重に判断する方針だ。


<用語>国際受刑者移送法

 外国で服役中の日本人や、日本で服役中の外国人を本国に移送して服役させる手続きを定めた法律。母国で刑に服すことにより、円滑な社会復帰を促すのが狙い。2003年施行。受刑者の同意が必要で、本国から移送の要請があれば、法相が余罪の有無や事件の関係者、社会の状況などを考慮して決める。移送に関する条約を締結している欧米諸国やブラジル、タイなどが対象。