1970年代に本格的に欧米で導入が進み、改良が重ねられてきた低用量ピル。生理痛や子宮内膜症の予防などに効果があり、長年服用しても妊娠に特に影響はないことも分かってきた。しかし、日本ではピルの効能や使用法などが、まだ十分に知られていない。“ジェンダー平等”の影で苦しんできた女性たちの間で今、低用量ピルが注目されている。
那覇市の30代の会社員女性は仕事に支障を来すほど、月経前症候群(PMS)の症状に苦しんできた。女性が自身のPMSに気づいたのは20代前半。交際していたパートナーの男性からの指摘だった。「一定期間の言動がおかしい、情緒不安定だ」と言われ、生理前にそうなると気づいた。「振り返れば、10代の時も感情的になって周囲に心配をかけていた」
女性は生理周期が25日で、時期によっては月2回の生理がある。PMSのせいで、一日中だるくて起きられず、急に仕事を休まざるを得ないこともあった。月の半分はPMSと生理で不調。生理痛にも苦しみ、鎮痛薬が手放せなかった。
市販のハーブや漢方では効果がなく、20代後半に近所の産婦人科へ。男性医師から「気分の問題」と言われてショックを受けた。女医のクリニックに電話しても、予約は数カ月待ちで「途方に暮れた」。
誰にも悩みを打ち明けられず、一人で抱え込んだ。インターネットのコミュニティーでPMSに関するグループを見つけ、つらい思いを吐き出した。最近になって、生理を4カ月に1回まで減らせる低用量ピルを知り、37歳で服用を始めた。現在は、仕事の休みに合わせて生理をコントロールしている。体調は大幅に改善し、仕事に差し障ることもなくなった。
PMSを抱えながら社会生活を送る大変さを体験した女性は「ジェンダー平等は女性の心身の健康の問題と切り離すことはできない。男性と同じくらい女性も働く時代になったけれど、我慢している人はたくさんいると思う」と話す。
女性たちが少しでも楽になれるように―。「苦しんでいるのはあなただけじゃない。社会に女性の体に対する認識がもっと広まってほしい」と願う。
<用語>低用量ピル
経口避妊薬。旧厚生省は1999年、低用量ピルを医薬品として承認。国連加盟国としては最後だった。2008年、子宮内膜症や月経困難症の治療を目的にした低用量ピルが保険適用になった。国連の「避妊法2019」によると、欧米などでは15~49歳のピル服用率が30%を超える一方、日本では2・9%にとどまっている。薬局で安価で入手できる海外に比べ、日本での普及は遅れている。無料入手できる国もある。