電気料金の値上げに対し、国と県が協力する形で、総額104億円の県民への新たな支援策が発表された。経済界は、1人当たりの県民所得が最も低い沖縄では、電力料金大幅値上げによる社会経済活動への深刻な影響は避けられないとして要請を続けてきた。経済界の危機感に対して、政治側が一致点を見いだして枠組みを構築した。
県工業連合会の古波津昇会長は、大幅な値上げが実施されれば企業の競争力が弱まるとして「官民一体となって9月までマイナスを回避できた」と評価した。
副知事の意欲
県と自民党県連は1月から調整を進めてきたが、値上げは全国的な課題とされ、政府内にも「沖縄の特殊事情」に対応する単独支援に厳しい意見もあった。
2月27日、県議会2月定例会の一般質問に立った島袋大氏(沖縄・自民)は、県が2023年度当初予算案で「特別高圧」契約の事業者支援を打ち出したことを評価。その上で「県がさらに予算を投じて、包括的な電気料金の対策事業を立ち上げるべきだ」と提言し協力する姿勢を示した。
関係者によると、池田副知事が非公式で上京して要請を続けたほか、島袋氏も自民党県連幹事長として松野博一官房長官らと面談を繰り返した。ある関係者は「池田副知事が決断し『県(負担)が1、国(負担)が1』と打ち出し、両者で負担を出し合う考えを示したことが大きい。一気に動き、3月上旬に事業スキームの大枠が固まっていった」と解説した。
「沖電支援」か否か
高圧契約者への支援枠組みでは、県経営者協会の下に電気料金高騰対策協議会(仮称)を設置するなど、経済界が表に出る形だ。県連幹部は「電力会社への直接の支援はできない。沖電のフォローではなく、県経済の支援との形でないと、政府、県民の理解は得られにくい」と語る。
ただ、支援策を巡り、県は財政調整基金などを切り崩すほか、国の交付金や振興予算の裏負担などで多額の負担が生じる。事業スキームへの疑問や、実質的な「沖電支援」との見方もあり、県議会内ではさまざまな意見が上がっている。
10日の県議会総務企画委員会で、無所属の会の當間盛夫県議は「沖縄電力は、国から値上げ幅を縮小するよう指摘も受けている。県民生活に影響するので大事な部分だが、一義的に電力が(値上げ幅縮小を)どうするかという部分が大事だ」と指摘した。
県議会では14日に沖縄電力の本永浩之社長を予算特別委員会に参考人招致し、意見を聴取する。経済界と県が負担軽減に動く中、議会ではさらなる議論が繰り広げられる見通しだ。 (大嶺雅俊、安里洋輔)