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日本「基地使用断れる」 事前協議 米は「通知」、解釈に齟齬<自衛隊南西シフトを問う>22


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
「事前協議」を規定した岸・ハーター交換公文

「台湾有事」が起きた場合に、沖縄が中国の攻撃対象となり得る一事例として想定されているのが、日本国内にある米軍基地を拠点に、米軍が有事に介入する場合だ。米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が1月に公表した台湾有事を想定した机上演習の報告書は、台湾に最も近い米軍基地が沖縄にあることに触れ、在日米軍基地の使用を「(台湾有事に)介入する必要条件と見なされるべきだ」と言い切った。

一方で、在日米軍基地が攻撃拠点となれば中国軍は在日米軍基地攻撃に踏み切るとの見方も示した。地上にいる何百もの米国と日本の航空機を破壊するなど「(中国にとって)非常に効果的」などと中国のメリットも説明し、沖縄が攻撃を受ける危険性の高さを浮かび上がらせた。

こうした米軍の行動に、日本が自動的に巻き込まれる事態を避ける効果があると期待されているのが「事前協議」だ。

日本国内への米軍基地設置を認めた日米安全保障条約第6条の実施に関し、日米が1960年に交わした「岸・ハーター交換公文」は、日本防衛以外の目的で米軍が日本国内の基地から直接戦闘に出撃する場合には、日米が事前に協議を行う必要があると規定する。

これに関し、岸田文雄首相は6日の参院予算委員会で「わが国の自主的な判断の結果としてイエスと答えることもあればノーと答えることもあり得る」と答弁し、在日米軍基地からの米軍出撃の可否を日本側が判断できると強調した。

一方、CSIS報告書は事前協議について日米間で解釈に「齟齬(そご)がある可能性がある」とする。同報告書によると米側当局者は事前協議について「米国の意図を日本に通知するものと見なす傾向があった」とした。出撃の可否を日本が判断できるとする日本側と解釈の違いが際立ち「危機の際に戦争計画の遅延や中断につながらないように直ちに是正されなければならない」と述べ、強い懸念を示した。

新外交イニシアティブ(ND)の猿田佐世代表は、事前協議制度が設けられた経緯について、1960年の安保改定に当たり改定反対の国民世論から理解を得るため「日本が望まない戦争に巻き込まれることに歯止めは掛けられる、と正当化する目的があった」と説明した。

日米間の解釈の違いに関しては、米軍は基地使用に制限を設けられることを嫌うが、日本政府は基地使用は断ることができるとの認識を国民に示していることから「国民の命が関わる場面で、説明が変わるのは許されない」と強調。中国の拡張主義が台湾有事の原因とされる一方で、米国が中国を過剰に刺激している面もあると指摘。「日本の米軍基地を使わせないかもしれない、と米国に今の段階で伝えることで、米国の台湾有事ありきの姿勢を慎重にさせる」として、「有事」の前段で情勢悪化を抑制することに活用するべきだとした。

(知念征尚、明真南斗)

連載「自衛隊南西シフトを問う」

2010年の防衛大綱で方向性が示された自衛隊の「南西シフト(重視)」政策の下、防衛省は奄美、沖縄への部隊新編、移駐を加速度的に進めてきた。与那国、宮古島に続き、今年は石垣駐屯地が開設される。22年末には戦後日本の安全保障政策の大転換となる安保関連3文書が閣議決定され、南西諸島の一層の軍備強化が打ち出された。南西シフトの全容と狙い、住民生活への影響など防衛力強化の実像に迫る。

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