「対立が紛争に変わる瞬間は対話が途切れた時」…沖縄県による平和交流に価値 那覇でシンポジウム


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沖縄による「地域外交」の可能性などについて議論する(左から)日本地域国際化推進機構の高橋政司顧問、韓国延世大学史学科の白永瑞名誉教授、国立台湾海洋大学海洋文化研究所の呉俊芳助理教授。オンラインで参加した(画面左)フィリピン大学ディリマン校のアリエス・A・アルゲイ教授、中国社会科学院文学研究所の孫歌研究員=14日夜、那覇市のぶんかテンブス館テンブスホール

 外交による平和的な緊張緩和や交流を考えるシンポジウム「交流・対話で創るアジア太平洋地域の平和と未来」(沖縄県主催)が14日夜、那覇市のぶんかテンブス館テンブスホールで開かれた。基調講演した元外交官で日本地域国際化推進機構の高橋政司顧問は、県が2023年度以降に設置する地域外交室について「他の国々と平和交流をもっていこうという県や知事の意志はものすごく価値がある」と評価し、県の積極的な外交に期待を示した。

 高橋氏は外交官として多くの国々で生活した経験を踏まえ「対立が戦争や紛争に変わる瞬間は交流や対話が途切れた時だ」と指摘。自身が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産登録に携わった経験から、アジアの国々と沖縄が共通の価値観をもって交流する意義を語った。

 パネル討論は韓国、台湾、中国、フィリピンの有識者らが沖縄のイメージや交流に向けた役割について討論した。台湾の国立台湾海洋大学海洋文化研究所の呉俊芳助理教授は、台湾の金門島と沖縄が戦争を経験した歴史に触れ「どちらも再び戦争になりたくないという思いがある」と語り、連携して国内外に平和の情報を発信していくことが重要だと強調した。

 フィリピン大学ディリマン校のアリエス・A・アルゲイ教授は米軍基地が存在した歴史的経緯や、基地跡地利用などを紹介。沖縄の役割について「近い国々や島々を結びつけ、共同で平和への取り組みを進めることができる」などと述べた。

 中国社会科学院文学研究所の孫歌研究員は、辺野古新基地建設などに対し、非暴力で抵抗を示してきた沖縄の人々に敬意を示しつつ、中国で他国の知識人同志の交流を深める動きがあることなどについて語った。韓国から出席した延世大学史学科の白永瑞名誉教授は民間交流による平和構築や、県が独自で「研究員」を設置することなどを提案した。

(池田哲平)