運送事業の琉球通運(那覇市、喜納秀智社長)はこのほど、人工知能(AI)による自動配車システムを導入し、業務の効率化に取り組んでいる。先行して運用するチームでは、配送ルートの情報をデータ管理することで走行距離の短縮などの成果が現れている。物流業界では、運転手に対する残業規制強化によって人手不足が予想される「2024年問題」が迫る。同社は効率化で労働環境の改善や人手不足といった課題に対応したい考えだ。
琉球通運はAI自動配車システムを昨年11月に導入し、手始めに青果物卸業者・農協直販(浦添市)から委託された輸送業務を担うチームの改善に着手した。
チームは運転手18人でトラック14台を運転している。従来は運転手の経験などを基にルートを定めていた。データを取ると、1日当たり合計千キロ以上の走行距離だったという。
2月に試験的にAIを用いて配車の最適化を実施。1日の走行距離が120キロ短くなり、年間にすると3万6千キロの短縮効果が見込めることが分かった。排出される二酸化炭素(CO2)も年間で約3万トン削減することが可能になるという。担当者は「千キロという走行距離に驚いた。物流会社の環境に対する責任の重さを実感した」と話し、デジタル化による配送ルート見直しの恩恵を実感する。
琉球通運では、運転手約170人がトラック約150台を使用しており、結果を踏まえてさらなる業務の効率化や平準化に取り組むことにしている。担当者は「将来的には荷主の異なる荷物を1台で運ぶ共同配送にも取り組みたい。デジタル化を進めながら労働環境を改善し、この会社に入りたいと思ってくれるような企業価値を高めていきたい」と意欲を語った。
働き方改革関連法によって、24年4月から自動車運転業務における時間外労働時間が年間960時間に制限される。野村総合研究所の調査では、残業規制強化に伴う人手不足で沖縄は翌25年に荷物総量の17%、30年には23%が運べなくなるとされ、物流業界は対策を急いでいる。(小波津智也)