【記者解説】石垣の陸自開設「米国にとっての防波堤」際限なき部隊増強の恐れも


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 防衛省が石垣市に新たな駐屯地を開設したのは、南西地域の「空白を埋める」部隊配備の一環だ。与那国町や宮古島市、鹿児島県・奄美大島と続いてきた駐屯地新設計画の最終段階に当たる。ただ、防衛省は「途上」(吉田圭秀陸上幕僚長)と捉えており、南西地域の防衛体制強化はさらに進み、新たな段階に入ろうとしている。

 南西地域の島々に「空白」なく置かれた自衛隊の部隊は、米国にとっては中国の太平洋側への進出を妨げる「防波堤」に位置付けられる。エマニュエル駐日米大使が沖縄の基地負担について「自由で開かれたインド太平洋を守るための責任」と表現したことと重なる。

 石垣駐屯地開設による地元生活への影響は見通せず、騒音や交通量増加を懸念する声が上がる。政府は「部隊配備が日本への攻撃の可能性そのものを低下させる」と説明するが、有事となれば攻撃拠点は狙われやすい。石垣島に配備されるミサイルの発射機は車両型で、移動しながら戦うとみられるが、移動範囲や一般市民との距離など不透明な点が多々ある。

 駐屯地完成後は政府や防衛省内に自らの判断で部隊を増強したり、装備を追加したりできるとの判断が生じかねない。増強計画が際限なく加速する恐れがある。
 (明真南斗)