戦争遺跡は「生き証人」 識者、継承へ調査、保存訴え 沖国大で市民講座


この記事を書いた人 田盛 良一
戦争遺跡について「歴史の『生き証人』だ」と述べ、保存と活用の重要性を訴える吉浜忍沖国大教授=7日、宜野湾市の沖縄国際大学

 戦争遺跡の保存や活用の課題について検討しようと、第37回南島文化市民講座「今、戦争遺跡を考える-保存・活用の現状と課題」(主催・沖縄国際大学南島文化研究所)が7日、沖国大で開催された。同大の吉浜忍教授が「戦争遺跡の保存・活用の歩み」と題して基調講演し、「戦争体験者が少なくなる中、戦争遺跡こそが沖縄戦の記憶を継承していく歴史の『生き証人』だ」と述べ、地域住民や自治体による調査の重要性を訴えた。

 吉浜氏は戦争遺跡について「戦後生活が始まったころは生活の場にごろごろしていたが、住民には過去を振り返る余裕はなく、その後の開発の中で戦争遺跡は破壊されていった」と指摘。「沖縄戦終了時と比べ、戦争遺跡は圧倒的に少ないがゼロではない。地域の住民・自治体が戦跡巡りをすることで価値を認識し、住民参加の調査によって文化財指定に取り組むことが大切だ」と述べ、保存と同時に戦争遺跡を紹介する地域の平和ガイド養成の重要性を訴えた。
 そのほか、県立埋蔵文化財センターの山本正昭氏、瀬戸哲也氏、読谷村教育委員会の上地克哉氏、戦争遺跡保存全国ネットワーク共同代表の村上有慶氏が戦争遺跡の調査研究や活用について報告した。
 山本氏は「沖縄戦に至るまで、意識高揚のための政策が実施されていく中で構築された施設が存在する」と指摘。
 瀬戸氏は「戦争遺跡の測量や発掘調査、各遺跡の比較分析など詳細な考古学的な調査研究はまだこれからだ。戦争遺跡の調査を近代史や沖縄戦研究、平和学習につなげていく必要がある」と提言した。
 一方、戦争遺跡の経年劣化に関する問題についても報告があった。上地氏は「戦争遺跡を公開活用すれば風化や劣化を止めることは難しい。常に維持、管理をしていかなければならない」と問題提起した。村上氏は広島の「原爆ドーム」の保存の取り組みや戦跡保存全国ネットワークの結成などについて報告した。