日本周辺の情勢悪化で先島地方の住民ら12万人を九州へ避難させることを想定し、17日に県庁で初めて実施された国民保護図上訓練。参加した先島の自治体が自ら作成した避難実施要領案を示す一方、現行の輸送手段で全住民を島外へ避難させることに「現実的ではない」と懸念の声も漏れ聞こえた。平和団体からは「有事でも避難が機能するのか。机上の空論だ」と批判も上がっている。
「わが国周辺の情勢悪化。あらゆる外交努力を尽くすも、関係は悪化の一途」「武力攻撃予測事態の認定に至るかは不明だが、先島諸島の住民を県外へ避難させる可能性もあると判断」
訓練で配られた資料には、物々しい言葉が並んだ。会場の県庁5階危機管理センター会議室は、県内外の報道機関が多く詰めかけ、関心の高さをうかがわせた。
先島の石垣市、宮古島市、多良間村、竹富町、与那国町の5市町村や関係機関は住民避難のため冒頭約15分、地図を前にそれぞれの活動について確認。その後は約2時間も座ったまま、各関係機関の取り組み報告などが続いた。報道機関に公開されたのは第1部のみで、「意見交換」とされた第2部は非公開だった。
参加者によると、第1部も第2部もさまざまな課題が出た訓練だった。新石垣空港の担当者は、避難対応が増えることに「人員不足が見込まれる」と指摘。日本航空(JAL)担当者は臨時便を増やすため「給油機材の調整が今後必要」と報告した。
小規模離島が心配する課題も切実だった。多良間村は島内に多良間空港があるが、夜間照明がないため季節によって航空機の運航時間が変わる。また冬場は北風で船が出航できず、水納島の住民らの避難に懸念があるという。担当者は「いろいろな課題があるが、皆で一緒に考え全体的に動かないといけない」と、今後の関係機関の取り組みを求めた。
一方、「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」の山城博治共同代表は「沖縄が戦場となる前提で、こういった訓練はやってはならない。戦争を避けるための努力をすべきだ」と強調した。
(金良孝矢)