民間使わず海自艦で輸送 石垣陸自が弾薬搬入 長射程弾配備、次の焦点


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
ミサイルの弾薬を運搬する車両を乗せ、石垣港に接岸した海上自衛隊の輸送艦「おおすみ」=18日午前6時54分、石垣市

 陸上自衛隊は18日、地対艦ミサイルなどを含む弾薬類を石垣駐屯地に搬入した。防衛省関係者によると、県外では民間船で弾薬を運ぶことも多い。民間船で運ばず、海上自衛隊の船舶で運んだ背景には、弾薬の輸送に関しては従業員の不安を受けた民間事業者の理解を得にくいという事情がある。将来的に敵基地攻撃能力(反撃能力)につながる長射程ミサイルが県内に配備される可能性もあり、次の焦点となる。 

 2021年の宮古島市への弾薬搬入を巡り、海運・荷役の県内主要業者は自衛隊の弾薬の輸送や荷役を行わない意向を防衛省に連名で伝えた。防衛省が事前に弾薬を輸送する経路などを明かさなかったことなどから、各社の従業員から不安の声が上がっていた。結果として、宮古島へは海自艦で弾薬を運んだ。

石垣島の市街地を行く、ミサイルの弾薬などを積んだとみられる車両=18日、石垣市

 石垣駐屯地が開設された16日、市内の市民団体は「万一の場合に備えられるようにすべきだ」として、弾薬を搬入する日時や経路の公表を求める要請書を駐屯地に提出した。だが、防衛省・自衛隊は今回も日時や経路を明らかにせず、公道を通って駐屯地に搬入した。

 対照的に防衛省が開示に前向きだったのは、弾薬庫に保管する弾薬の種類だ。特定の弾薬庫の内容は「防衛能力が明らかになる恐れがある」として明確にしないのが防衛省の基本姿勢だが、宮古島に続く「例外」(防衛省幹部)扱いとした。離島の場合、他地域と海で隔てられており、配備されている部隊が使う弾薬を保管していることが自明だからだ。

 今後は現在の12式地対艦ミサイルを長射程化した「能力向上型」が県内に配備される可能性も出てくる。吉田圭秀陸上幕僚長は16日の会見で、配備先は未定とした上で「方針が決まった段階で、地元と調整して理解を得て初めて配備となる」と語った。

 県内では、敵基地攻撃能力を持つことで有事の際に「標的」となることへの恐れがあることから、防衛省が方針を決定して配備に向けて具体的に動き出せば、駐屯地周辺の住民を中心に強い反発が生じると予想される。部隊配備には明確に反対してこなかった玉城デニー知事も、敵基地攻撃能力につながる長射程ミサイル配備に反対する考えを明言している。 (明真南斗)