数検準1級、中2生が合格 コツコツ勉強、筋トレが趣味の父から学んだこと


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県内最年少で数学検定準1級に合格した平野陽輝さん(右)と父親の聡太郎さん=17日、名護市屋部

 【名護】名護市屋部の平野陽輝さん(14)=県立球陽中2年=がこのほど、実用数学技能検定(数検、日本数学検定協会主催)の準1級に合格した。高校3年修了程度の問題が出題され、14歳6カ月での合格は県内でまれだ。父・聡太郎さんの一言がきっかけで、数学に興味を持った陽輝さんは「父親が趣味の筋トレを楽しむように、自分は大好きな数学の勉強を人生のたしなみの一つとして続けたい」と語る。唐突に飛び出した「筋トレ」と、数学を極める道との共通点とは、一体なんなのか?詳しく聞いた。(松堂秀樹)

■ひらめきより基礎が大切

 試験範囲は理系大学受験レベルの数学Ⅲで、数列と極限、合成関数、微分法・積分法、行列など。昨年10月の1次試験に合格したが、記述の2次試験は不合格に。2月の再挑戦で見事合格した。

 小6で2級に合格していた陽輝さんは「準1級からはじっくり考える時間が必要なレベルになり、かなり手間取った。勘やひらめきだけで解くのではなく、基礎も大切だと学んだ」と振り返った。

 数学に興味を持ったのは小5の頃。授業参観で算数の授業を見た父親の聡太郎さん(47)に、正方形の一辺の求め方を尋ねられたことがきっかけ。平野さんは「計算機を使っても答えが出ない。お父さんにルート(平方根)を教えてもらって、答えが出せたことで、数学にはまった」と振り返る。

 

■「美しさ」に夢中 

「合格はうれしいが、本来数学という学問はスピード競争ではない」。陽輝さんは断言する。フェルマーやガウス、ピタゴラスなど、定理を発見した数学史上の偉人に憧れ、「いつか自分も公式や定理を見つけたい」と、真理を探究する数学の「美しさ」(陽輝さん)に夢中だ。
 

平野陽輝さんが合格した数学検定準1級の問題の一部(平野聡太郞さん提供)

 こうした陽輝さんの数学との向き合い方は、大北数理教室の大城宜実代表の影響が大きいという。「数学の学習塾に入ると最年少記録ばかりを気にしてせかされるが、大北数理教室は学問に触れる喜びや、人類の文明の礎になった数学の素晴らしさを教えてもらえる。数学の楽しさや美しさを教えてくれる大城先生に感謝している」と陽輝さんは話す。

 大城代表は、陽輝さんを小学校5年生の時から高校数学を週に1日(2時間)指導しているが、平野さん親子について「お父さんがよく息子を導いている」と目を細める。数学を専門に学ぶ高校生や大人たちに混じって学ぶ陽輝さんは「先生が伸び伸びと、数学が好きな気持ちを大切にしながら学べるようにしてくれる」と声を弾ませる。

 

■ゲーム感覚で楽しく

 聡太郎さんは、浦添市消防本部で消防士として勤務していたころは仕事と家庭と筋トレの両立に悩んだことがある。医師の妻を支えるため取得した育休中も、陽輝さんをだっこ帯に入れ、家事の合間に陽輝さんで加重して懸垂などを続けてきた。

トレーニングルームで過ごす平野陽輝さんと父親の聡太郞さん=2009年、浦添市の浦添市消防本部

 現在は名護市屋部の自宅にトレーニングルームを作りこだわりの器具をそろえるなど徹底して筋トレを追求する聡太郎さんは、浦添市消防本部にも赤ちゃんだった陽輝さんをよく連れて行った。「ダンベルをころころ転がして楽しそうに遊んでいた」と振り返る。

 現在は毎日1、2時間の数学の勉強を続けているという陽輝さんは「父親の筋トレのようなもので、人生のたしなみの一つだ」と話す。力まず、ゲーム感覚で楽しく勉強することが継続のコツだという。

 中南部方面にドライブする際には、沖縄自動車道の許田インターチェンジのカーブを数学で算出することも脳裏によぎるという陽輝さん。現在、沖縄市の球陽中にバスで通う陽輝さんはその高速道路を利用しても1時間以上かかる。球陽中2年B組の担任の波照間生子教諭は「長距離移動の疲れからか、寝過ごしてしまうこともあった」と心配だったことを吐露する。「今は移動や学校生活に慣れ、同じように数学好きな友達と切磋琢磨(せっさたくま)しながら頑張っている。1級合格目指して頑張ってほしい」とエールを送った。