休業、営業時間短縮…沖縄のライブハウス、コロナ禍の3年余 マスク緩和も対策は継続「頑張るしかない」


この記事を書いた人 Avatar photo 瀬底 正志郎
開店前に店内のテーブルをふくライブハウス店長の中山一朗さん=8日午後、那覇市松山

 沖縄県内で新型コロナウイルス感染者が初めて確認されてから3年余が過ぎた。この間、酒類を提供する飲食店などは“3密”の象徴とされ、休業や時短営業を要請されるなど、厳しい日々が続いた。新型コロナ対策のマスク着用を個人判断に委ねる政府方針が13日から適用され、暮らしが大きく変わることが見込まれる。コロナ下で影響を受けたライブハウス店長は「社会がどう変わるか分からない」と不安を抱えつつも前を向く。

 県内随一の繁華街、那覇市松山に店を構えるライブハウス「GOLD DISC OKINAWA」。オールディーズの楽曲の生演奏を食事と共に楽しめる店だ。これまでは客に、食事以外の場面でのマスク着用を求めてきた。これからは客個人の判断に委ねる。

 「この3年間は、ただただ苦しかった」。店長の中山一朗さん(44)はコロナ下での営業を思い返す。これまで、要請が出る度に店を閉じた。最長で半年間、店を閉じたこともある。

 店舗は地下にある。「いつ感染が収束するか分からない」と、換気のため室内の空気を循環させる機械を導入した。休業要請が明けると座席数を120から50に減らし、1曲ごとにマイクを消毒するなど工夫して営業を続けてきた。

 それでも、繰り返す感染の波にはあらがえない。「できることは全てやろう」。休業中もどうにか利益を得ようと、演奏をライブ配信するための機材を100万円ほどかけてそろえた。

 客足も遠のいた。一時は通常時の10分の1程度の客しか入らないこともあった。現在は平時の8割程まで回復したが、営業時間は短縮したままだ。

 同業者の中には耐えきれず店を畳んだ人もいる。中山さんの店も家賃などの固定費やコロナ対策費、人件費など3年間で6千万円ほどの支出となった。この間の売り上げは、その1割にも満たないという。

 今後、マスクの着用は客それぞれに委ねる。この判断に抵抗を持つ客が出ることも予想する。店自体の感染対策は今後も続ける予定で、従業員もしばらくはマスク着用で仕事に当たる。

 深夜まで営業するライブハウスであるこの店は制度上、プレミアム付き商品券の対象にはならなかった。最近の物価高騰で、店はさらなる打撃を受ける。

 「どう(社会が)変わるのか読めないので不安はある」。それでも前を向くしかない。「これから取り戻していかないといけない。頑張りたい」

(西銘研志郎)