新型コロナウイルスの影響緩和に伴い、沖縄県内地価の回復が鮮明になってきた。国土交通省が22日発表した沖縄県内の公示地価(1月1日時点)は、全用途平均で前年比3.6%上昇した。上昇は10年連続で、上げ幅も前年比1.6ポイント増と拡大した。沖縄を訪れる国内観光客はコロナ前を超える水準になり、一時はゼロだったインバウンド(訪日客)も増えつつある。全ての用途で地価が前年から下落した地点はなく、住宅購入意欲や投資需要の高まりなど景気回復への期待感が反映された形だ。
コロナ禍が収束へと向かう中で、需要に陰りがみられたマンションは開発業者の仕入れ競争が激しくなっている。原材料費高騰に伴う建築単価の高止まりもあり、県内外のデベロッパーが手掛ける物件の販売価格が上昇。外資系の高級ホテル建設も進行中で、周辺地価に影響を与えている。
■バブル期並みの単価
住宅総合メーカーの大和ハウス工業が那覇市首里金城町に開発し、今月完成した分譲マンションは2LDKと3LDKの間取りで、販売価格は6238万円~2億1846万円。平均坪単価は330万円で、同社の沖縄営業所として過去最高という。県外の顧客を中心に7割が成約した。
国土交通省のまとめによると、県内の2022年の新設住宅着工戸数は前年比5.1%減の9179戸で、1973年以降で過去最少だった。貸家の落ち込みが大きいが、分譲マンションは同32.7%増加した。県外からの引き合いも活発で、コロナ禍からの観光回復がその流れを強めている。
「マンションは沖縄でもバブル期の最高単価に迫りつつある。以前はハワイのコンドミニアムなどを購入していた方の一部が沖縄にシフトしている傾向もみられる」。同社の佐藤佑紀・沖縄営業所営業第一課長は市況を分析する。コロナ禍でのテレワーク定着や、セカンドハウスとしての需要も地価を押し上げる一因とみる。
■懸念材料
県内地価は、これまでも観光産業の好不況の影響を大きく受けてきた。コロナからの回復が顕著になったことで、県内調査の代表幹事を務めた不動産鑑定士の仲本徹氏は「持ち直しの動きが強まり、上昇基調は一定期間続くだろう」と見通す。
一方、直近の懸念材料として、ロシアのウクライナ侵攻の長期化やそれに伴う原材料費の高止まりに加え、金利と米シリコンバレー銀行の破綻を発端に広がる金融不安を挙げた。
日本銀行のマイナス金利政策の影響で住宅ローン金利は低く抑えられ、不動産投資の需要拡大の一因となってきた。昨年12月の日銀の政策修正で、固定の住宅ローン金利には上昇の兆しも見え始め、投資への慎重姿勢が増す可能性がある。
県内では09年、米国発の「リーマン・ショック」に始まった世界的な金融危機の影響で、前年まで下げ止まりの傾向があった地価の下落幅が拡大。不動産投資の中止や宅地の買い控えが相次ぎ、景気が冷え込んだ。仲本氏は「日本本土に波及しないかは注視する必要がある」と指摘した。
(當山幸都)