【うるま】うるま市石川東山で60年間愛された「石川そば仲本製麺所」が閉店し、2022年11月から「ベーカリーパーラーサトウ」として生まれ変わっている。パーラー開店は、創業者の孫で製麺所の隣家で育った大城一哉(34)さんが、賃貸物件サイトに投稿した文章がきっかけだった。大城さんは製麺所への思いとともに「次借りられる方が、楽しい場所になるよう心から願っております」とつづった。
製麺所は継承の難しさを理由にたたんだ。午前1時から仕事が始まり、長時間労働も珍しくない。創業者は昔ながらの製法にこだわり、作り置きもしなかった。大城さんは「跡を継いで残したかったけど職人気質(かたぎ)のやり方を継続するのは難しかった」と話す。
パーラーの経営を考えていた佐藤光さん(36)は、賃貸物件サイトで大城さんの文章を見るやいなや電話をかけた。「一緒にお店を作りませんか」。リフォームなどを手がける一丸工業に勤めていた大城さんに内装をお願いした。大城さんは「絶対やる!」と即答した。
デザインは、壁の色合いや天井の模様など元の面影を残すようにし、地元の人や子どもに気軽に来てもらうため、「落ち着けるゆるやかな空間」を目指した。年末は親族総出で働いたといったさまざまな思い出を聞いた佐藤さんは「絶対いいお店になる」と確信したという。
建物の雰囲気が残っているため、地元の来店客が製麺所を懐かしそうに話すことも多いという。大城さんは「形を変えて61年目に進んだと思ってる」とうれしそうに話した。佐藤さんは「地元に愛される空間を作りたい」と意欲を見せた。
(古川峻)