【深掘り】国内初、沖縄県議会が「平和外交」意見書可決 保守系巻き込みに「意義」 県民の懸念を映し出す


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沖縄県議会

 政府が閣議決定した安全保障関連3文書による南西地域の防衛力強化を進める中、県議会は「抑止力」ではなく「対話と外交」を求める意見書を可決した。全会一致にはならなかったものの、革新系が多い与党だけでなく、保守的な立場を示す中立会派「無所属の会」も賛成。自民以外は退席で対応し、県内で急速に進む防衛力強化の動きに対し、県民の懸念の強さを映し出した形だ。

 昨年12月の3文書の閣議決定から3カ月が経過し、安全保障問題に敏感に反応してきた与党の対応としては後手に回った感は否めないが、県が力を入れようとする「地域外交」の後押しになると期待する声もある。

 陸上自衛隊第15旅団の師団化やミサイル部隊の新設など矢継ぎ早に打ち出される県内での防衛体制強化に懸念を募らせていた与党。ただ、与党内で防衛力強化の中心となる自衛隊へのスタンスが異なることもあり「動きが鈍かった」(与党県議)。支持層が政府姿勢への反発を強める中、2月定例会を前に意見書提案に向け始動した。

 一方で急激な防衛力強化の動きには保守層からも懸念の声が上がっており、与党と一致点が見いだしやすい環境が整っていた。3月中旬に与党が野党・中立との調整を本格化させる中、抑止力の重要性に理解を示す文言挿入を求める自民とは折り合わなかったものの、無所属の会や自民党を離党した照屋守之氏(無所属)との調整は進んだ。照屋氏も賛成する意向を示していたが、自民が出した対案にも賛同できるとして、最終的に本会議では退席した。

 結果として「ミサイル配備の即時中止」など与党が当初示していた文言から表現は弱まったが、保守系も巻き込んだ形での意見書可決となった。

 ある与党県議は「表現は弱まったが当初と趣旨は変わらない。いつもと同じ与党だけの顔ぶれでなく、枠が広がった意味は大きい」と強調する。

 意見書の可決に県幹部の一人は「全会一致にならなかったのは残念だが、外交によって緊張を緩和すべきだというのは県の方針とも一致する」と前向きに受け止めた。

 県は新年度、地域外交室を立ち上げ、アジア太平洋地域の信頼醸成に向けた独自の施策展開に乗り出す。30日には照屋義実副知事が駐日中国大使と会談。意見書でうたわれた、中国との友好関係の発展への取り組みと重なる格好となった。地域外交室立ち上げを目前にした意見書可決に県幹部は「新年度、新たな取り組みを始める弾みになる」と感触を語った。
 (大嶺雅俊、知念征尚)