市民活動が先行する形となった差別的言動(ヘイトスピーチ)に関する取り組みは、条例制定で行政も一体となって解消に取り組める体制ができた点で大きな一歩と言える。
一方で条例は普及啓発を目的とした「理念型」で、長く議論された罰則規定は「過度な規制になる」として見送られるなど課題は少なくない。
条例では、本邦外出身者(外国人)を対象とする事案には発言者の公表措置を設けているが、氏名を公表して常習的に差別的言動を繰り返す人物が出た場合の抑止力には課題が残る。発言者の所在が判明しない場合は公表に至らないこともある。
県民であることを理由とした差別的言動、いわゆる「沖縄ヘイト」は「定義が難しい」として、発言者の公表などは明記されていない。現段階では施行後の相談業務を通して事例を蓄積し、審議会で協議するにとどまる。
反ヘイトの活動を続けてきた市民からすれば「腹六分」の内容だが、審議会が県に対して行える「建議」や、施行3年後をめどにした見直しを期待している。玉城デニー知事は見直しについて「県民や専門家の意見を参考にしたい」と述べており、罰則規定や「沖縄ヘイト」など、積み残された課題の解決も急ぐ必要がある。
(嘉陽拓也)