御菓子御殿の「元祖紅いもタルト」の供給が不足し、観光客が連日長い列を作っている。同社営業本部長の久田友次郎氏は「宮古島の農家と新しく契約したが、早くても7月頃からしか入荷できず、このままでは紅イモの在庫が底をついてしまう可能性がある」と苦悩を語る。
国や県の統計によると紅イモを含むかんしょの作付面積は、サツマイモなどの立ち枯れや腐敗を引き起こす基腐(もとぐされ)病の影響が出る前の2017年度が281ヘクタール、21年度は266ヘクタールで、生産量は17年度の3820トンに対し21年度は16.8%減の3180トンだった。基腐病の被害は品種によって違いがあり、県内では加工用の品種「ちゅら恋紅」が被害の大半を占める。
ちゅら恋紅は紅イモのタルトなどの菓子にペーストとして使用されている。単価は低いが、比較的栽培が簡単だという特徴がある。
「紅イモの村」として知られる読谷村も、不作に悩んでいる。農家の高齢化や後継者不足による相次ぐ離農が問題になっていたところに基腐病の影響を受け、サトウキビなどへの転作が相次ぐなど、収穫量は減少している。読谷村営農知産地笑推進課によると、収穫量は19年度の約370トンに対し、21年度は約200トンとなった。担当者は「22年度はさらに減少する見込みだ」と危機感を募らせる。
御菓子御殿は18年まで、紅イモを年間千トン入荷していたが、22年は250トンと4分の1まで減少した。入荷量のうち、19年は約30%が読谷産だったが、現在は久米島産が半分近くを占め、読谷産は2割に満たない。
御菓子御殿は読谷村の村おこしの一環として、農家からの仕入れを前提に事業を始めた経緯があり、読谷村の農家の多くはちゅら恋紅を中心に栽培していたことから、基腐病の被害が大きかった。営農知産地笑推進課の担当者は「読谷の紅イモは御菓子御殿をきっかけに知名度が上がったが、頼りすぎていた。リスク回避のために多品種の栽培を勧めるべきだったが、加工用ばかり作っていることを放っておいてしまっていた」と反省する。
同村では県農業研究センターから年間350本提供される無菌苗を、村有地で4千本以上に増殖し、農家に無償で提供している。増殖に手間が掛かることや数に限りがあることから、御菓子御殿としても苗の配布を検討しているという。同課の甘しょ担当者は「昨今のイモブームを追い風に農家に意欲を持たせ、栽培品種や生産割合を変更することで紅イモの生産量を確保したい。読谷村を代表する特産品なので、県とも連携を図り、イモを盛り上げていきたい」と話した。
(與那覇智早)