印刷業の池宮商会(那覇市、池宮城拓社長)は、沖縄の古い建物を3D(3次元)記録で残す取り組みを進めている。現存する沖縄最古の映画館で芝居小屋としても親しまれた首里劇場の3D記録を公開している。
池宮城社長らが同社の文化活動として1年ほど前から始め、これまで県内最古のコンクリート建造物の旧大宜味村役場や、日本の近代建築百選に選ばれた与那原町の聖クララ教会など数カ所を撮影した。3Dの模型データを作成するサービス「Matterport」を使っている。
首里劇場の3D記録は、建物内の300地点を4Kカメラで360度撮影した映像を組み合わせ、一つの空間に仕上げた。映像は高精度で、壁のシミや落書きなど細かい部分まで見られ、実際に現場にいるような感覚で見学できる。
同劇場が現在の建物で開業したのは1950年。施設を管理・運営していた金城政則館長が昨年4月に死去し、建物の保存が課題となっている。老朽化で一般客が立ち入れなかった2階席や、映写室まで入ってみることが可能だ。
1972年の日本復帰前に建てられた建物は築50年以上と老朽化が進み、取り壊しや建て替えの時期に差し掛かる物件も多い。45年に建設された旧東恩納博物館や那覇商工会議所なども撮影しようとしたが、問い合わせた時には既に取り壊しが始まっていたという。
池宮城社長は「壊された後に撮っておけば良かったではもったいない。記録を残す文化活動として今後も撮影を続けていく」と話す。
記録活動とは別の活用も予定している。ホールの座席チケットを購入する際にデジタル上で座席からの景色を確認して席を選べる。不動産の場合は物件を3Dで確認でき、博物館の場合は遠隔地にいても見学が可能だ。デジタル上で寸法を測ったりすることもでき、さまざまな場面で活用の可能性がある。
池宮城社長は「写真や紙ではできないことが3Dでできる」と話した。
首里劇場の3D記録は、首里劇場調査団の公式サイトで見られる。
(中村優希)