沖縄・奄美の世界自然遺産の保全と活用を考える 住民主体の活動を強調 沖縄・博物館で講演会


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
沖縄・奄美の世界自然遺産の保全と活用について議論する登壇者ら=那覇市おもろまちの県立博物館・美術館

 【那覇】沖縄・奄美の世界自然遺産の保全と活用に関する講演会がこのほど、那覇市おもろまちの県立博物館・美術館で開かれ、約90人が参加した。国頭村安田でのヤンバルクイナ保護や鹿児島県・徳之島での環境教育と人材育成などの現状が報告されたほか、沖縄に国立自然史博物館を設立する意義などを確認した。

 国頭村観光協会の比嘉明男会長は、出身地・安田でのヤンバルクイナ保護活動を報告した。2009年に国指定の鳥獣保護区となった際、数年かけて住民が議論を重ねて合意に至ったことを紹介。その経験が16年のやんばる国立公園指定、21年の世界自然遺産登録につながったことを強調し「守り(保全)つつ、攻め(活用)にどうつなげていくかが大事だ」と指摘した。

 どうぶつたちの病院沖縄の長嶺隆理事長は「やんばるの希少な固有種をマングース、ノネコが捕食している」と指摘。安田の住民が02年にネコの不妊去勢手術やマイクロチップ装着といった、先進的な活動を実施してきたことを紹介した。

 徳之島虹の会の美延睦美事務局長は、沖縄・奄美の自然遺産が世界に類を見ない「人の暮らしのすぐそばにある」ことを指摘。特に徳之島は「人の暮らしの影響を最も受けやすく、だからこそ、最も保全活動を要する」と強調し、住民の意識高揚や自然の価値を学ぶための施設・機会を設けること、人材育成を訴えた。

 国立沖縄自然史博物館設立準備委員会の岸本健雄代表理事はこれまでの活動を報告。生物多様性の宝庫である東アジア・東南アジア地域に拠点がないことを指摘し、沖縄に設立する意義を強調した。

 討論では、県立辺土名高2年の上原蓬さんも登壇し、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の下、地域、教育・研究機関などと連携した活動を展開していることを説明した。
 (安里周悟)