坂本龍一さん、小さな島の歌世界に 唄者古謝美佐子さん「涙止まらない」


この記事を書いた人 琉球新報社

 3月28日に死去した音楽家の坂本龍一さんは、沖縄民謡とワールドミュージック、エレクトロニックを融合させ、沖縄音楽を内外に広めた。親交を深めた歌手らは悲しみの言葉とともに、沖縄音楽の可能性を広げた坂本さんの功績に感謝した。

 「涙があふれて止まりません」。1980年代から近年まで長年親交を深めた歌手の古謝美佐子さんは、自身の公式サイトで悲しみを伝えた。

 古謝さん、我如古より子さん、玉城一美さんは坂本さんのアルバム収録曲「ネオ・ジオ」(87年)や「ビューティ」(89年)のレコーディングやコンサートに出演。「オキナワチャンズ」としてフィーチャーされ、88年のアメリカツアーと90年のワールドツアーに同行した。2015年には坂本さんの曲に古謝さんらが歌詞を付けた楽曲「弥勒世果報(みるくゆがふ)―undercooled」を発表。20年の沖縄でのコンサートでは坂本さんの伴奏で古謝さんが歌った。

 古謝さんは公式サイトで「沖縄民謡一筋の私に最高の音楽人生を教えてくれたのは坂本さん」と感謝し、「(坂本さんは)世界地図で鍼(はり)の先くらいの小さな島の歌を世界に持っていってくれた。坂本さんと関われることができて私は幸せな沖縄民謡の唄者です」とつづった。我如古さんは「また一緒にお仕事をしたかった」と声を落とした。「坂本さんとの出会いで沖縄民謡の視野が広がり、いろいろな挑戦をしようと思えた。感謝を伝えたい」と述べた。

 沖縄民謡に詳しい小浜司さんは「沖縄音楽が坂本さんのワールドツアーで知られるようになり、ワールドミュージックに関心のある人たちが本土から沖縄に多く入ってきた。これが90年代の沖縄音楽ブームに火を付ける要因の一つとなった」と振り返る。「坂本さんの取り組みは一過性のものではなく、沖縄へのリスペクトが常に感じられた」と話した。(田中芳、田吹遥子)

沖縄で開かれたコンサートでピアノ演奏する坂本龍一さんと歌う古謝美佐子さん=2020年1月5日、宜野湾市の沖縄コンベンションセンター劇場棟(喜瀨守昭撮影)