本村ツルさん死去 平和「語り部」バトンを渡し 関係者「心の支え」


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開館25周年記念特別展「ひめゆりの証言員たち」のオープニング・セレモニーでテープを切る元学徒の(前列左から)島袋淑子館長、本村ツルさん、大見祥子さん=2014年

 元ひめゆり学徒として、ひめゆり平和祈念資料館の5代目館長などを務めながら、沖縄戦の実相の継承に全力を傾けた本村ツルさんが7日、亡くなった。本村さんと共に戦場をさまよった元学徒や、沖縄戦継承に取り組む関係者は訃報に接し「もう少し元気でいてほしかった」と悼み、平和への思いの継承を誓った。

 元学徒で、本村さんの後に資料館長を務めた島袋淑子さん(95)と証言員の仲里正子さん(95)は資料館を通じてコメントを出した。

 島袋さんは1989年に開館したひめゆり平和祈念資料館時代の本村さんについて「証言員や職員のことを常に考え、『本村さんに聞けば何でも分かる』というぐらいみんなが信頼していた。本村さんに『憧れの的でしたよ』と言ったら、『何言ってる』と笑ってた」と懐かしんだ。

 仲里さんは「本村さんには、もう少し元気でいてもらいたかった。感謝の気持ちでいっぱい。資料館づくりの中心で私たちの心の支えだった。悲しいけれど安らかに眠られることを祈っている」と悼んだ。

 本村さんと同時期に県立第一高等女学校の生徒だった後輩の翁長安子さん(93)は「訃報を聞いてびっくりしている。とても残念だ。本村さんがいたからこそ資料館は完成した」と話し、本村さんとの思い出を振り返り「人柄が良く、面倒見のいい大先輩だった。最後に話したときの笑顔が忘れられない。寂しく感じる」と語った。

 ひめゆり平和祈念資料館長の普天間朝佳さん(63)は3日に本村さんの元を訪ね、2021年にリニューアルした同館が高い評価を受けていることを報告した。「『良かったさあ』と喜んでもらいうれしかった。先生たちの言葉や行動を道しるべにこれからの運営に努めることを改めて誓った。もっとお話をしたかったし、教えていただきたいことがあった」と惜しんだ。

 本村さんは沖縄戦生存者の高齢化を見据えて、次世代の語り部育成に力を入れていた。沖縄陸軍病院南風原壕近くにある南風原文化センター前館長の平良次子さん(60)は「戦争を体験していないわれわれの世代が沖縄戦をどう継承していくかを教えてもらった。本村さんの思いを受け止め、次世代に受け継ぎたい」と語った。
 (吉田健一まとめ)