「若い女性のがん細胞を見つけるのは辛い」―。女性特有のがんである子宮頸がんを防ごうと、がん細胞を検査する病理専門医や細胞検査士らが啓発活動に取り組む。性交渉によるウイルス感染で思春期や若年成人世代が罹患する傾向があるが、定期検診による早期発見とワクチン接種による予防が可能ながんでもある。日頃は顕微鏡でがん細胞を目にして心を痛めている医師や技師らは、9日の「子宮の日」にちなんで、受診率と接種率の向上へ街頭で直接女性たちに呼びかける。
街頭活動は9日午後0時半ごろから那覇市おもろまちのサンエー那覇メインプレイス内で行われる予定で、検診の案内チラシや協力企業からの試供品などを配布する。(慶田城七瀬)
子宮頸がんは子宮の入り口にできるがんで、ヒトパピローマ・ウイルス(HPV)への感染が原因となるが、性行為を経験した女性なら誰もが感染する可能性がある。免疫により自然消滅する一方で、感染が長期間続くこともある。初期は自覚症状がないが、進行すると月経以外に不正出血することもある。
沖縄県内で2019年にがんと診断された女性4747人のうち、子宮頸がんは525人。そのうち15~39歳までの思春期と若年成人を含む「AYA世代」が219人で約4割を占める。
子宮頸がんの検診は、20歳以上の女性で2年に1回の受診が推奨されているが、県によると子宮頸がん検診の2019年の受診率は45.5%で、半数にも達していないのが現状だ。
早期発見で治療できれば子宮を残し出産も可能とされるが、21年度沖縄県がん登録事業報告書によると、子宮頸がんを含む子宮がんの09-18年の10年間の年齢調整死亡率は、沖縄県が6.8~10.9%で推移し、全国平均5.0~5.7%よりも高い傾向が続いている。
子宮頸がんの予防に有効なHPVワクチンについて、厚生労働省は一定の安全性が確認されたとして、22年4月から9年ぶりに接種勧奨を再開した。
啓発活動の呼び掛け人である臨床検査技師で細胞検査士の崎山三千代さんは、子宮頸がんで友人を亡くした経験がある。友人は1年ほど不正出血が続いた後に腰の痛みなどを訴え、診察を受けた時にはがんが進行していたという。「家事や育児などで忙しい女性は、自分の体のことを後回しにしがち。まずは自分の体を守ることを第一に考えてほしい」と切に願う。
県臨床細胞学会長で病理専門医の樋口佳代子さんは「若い人のがん細胞を見るのは辛い。学校教育などで教わらないため周知が難しいが、学校や産婦人科医師らとも協力して草の根で繰り返し伝えたい」と意気込む。女性特有のがんだが「男性にも自分の家族やパートナーのことを思って知ってもらいたい」と話した。