沖縄戦体験者に思い重ね 竹下景子さん 愛知でひめゆり朗読


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沖縄公演も実現したいと期待を話す竹下景子さん=11日、東京都内

 【東京】俳優の竹下景子さんが朗読公演「〝ひめゆり〟を忘れない」を通して平和の大切さを伝え続けている。脚本は沖縄戦を生き抜いたひめゆり学徒の手記を基にしたオリジナルストーリー。公演を前に竹下さんは脚本を体感するように沖縄本島も訪問。各地を巡り「痛ましい出来事に直面しても人は生きる。あの戦争を、私たちは忘れてはいけないと背を押された」と語り、沖縄戦体験者に思いを重ねる。

 作品は昨年5月に都内で初演された。上演時間は休憩10分をはさんで約1時間50分。脚本は中島丈博さんで、演出を菅田華絵さんが担当する。石塚まみさんのピアノ・歌と共に朗読が披露される。

 物語は南風原の沖縄陸軍病院へ動員された生徒と教師たちが、酸鼻を極める戦場の体験を生々しく描く。そして戦後を生き抜いて90歳になった主人公が基地が集中する現代の沖縄に心痛し、今を生きる人々へ語り掛けるまでを伝える。

 竹下さんが実際に沖縄を訪問したのは、昨年5月の都内での公演前だった。「沖縄本島の南部は一昨年の12月に初めて行って、ひめゆり平和祈念資料館も訪ねた。普天間朝佳館長ともお会いし荒崎海岸も案内していただいた」と振り返る。

 平和ガイドの案内でひめゆり学徒ゆかりの地も訪ねた。ガマに実際に入った際には「ここで本当に人が、しかも負傷した人が生活していたのかと想像しても想像しきれなかった」と言う。

 宜野湾市の佐喜眞美術館を訪ねた際に見詰めた丸木位里・俊夫妻の沖縄戦の絵。「本当に細かく(沖縄戦で)何が起きたのか、細かく包み隠さず描かれていた」。絵の情景がよみがえったのか。「とても痛ましい光景なのだけれど、その一方でチョウチョウが舞っているじゃないですか。あのチョウチョウが沖縄で亡くなった人、生きながらえた人たちを象徴しているような気がして、舞っている姿がこれからの希望につながっていくような気がして。本当に大変な、痛ましい出来事だったわけですけど、それでも人は生きていくという、そういう力をいただいた」と話す。

 丸木夫妻の絵を通して、あらためて向き合った沖縄戦。「あの美術館の中にはたくさんの人たちの魂が宿っていて、やはり私たちは戦争はしてはいけないと、すごく力強く背を押された」と語り、公演に決意を込める。

 竹下さんは「弾むような青春を過ごしていた少女たちが戦争に駆り立てられていく、その悲惨さが冒頭から描かれ、石塚さんの音楽が少女たちの気持ちをすくい上げて音楽にしてくれている」と語る。石塚さんは沖縄訪問を繰り返して作曲。竹下さんは「情景をまざまざと音楽に反映させていて、ぜひ聞いてほしい」と呼び掛ける。

 公演は今月21、22日に竹下さんの故郷である愛知県の県芸術劇場で開催され、24、25日には同県豊橋市の穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペースで行われる。開演時間は21日午後7時、22日午後2時、24日午後6時半、25日午後2時となっている。

 竹下さんは沖縄公演も期待し「演劇は一瞬一瞬を観覧者と一緒につくっていくもの、それが映像と違う魅力で、力にもなる。地元の皆さんと、この作品をぜひ共有できればと思う」と話した。(斎藤学)