「宝の海埋めないで」 浦添西海岸での軍港埋め立て 地元住民らの反対の声相次ぐ 経済界は早期進展に期待


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那覇軍港の移設予定地=2020年8月15日、浦添市西洲(小型無人機で撮影)

 米軍那覇港湾施設(那覇軍港)の浦添移設を巡り、日米両政府が20日の日米合同委員会で軍港代替施設の形状や施設配置に関する計画に合意したことを受け、海に親しんできた地元住民らからは「宝の海を埋め立てないで」などと反対の声が相次いだ。一方、早期の西海岸開発を求めてきた経済界は歓迎ムードが漂い、一日も早い計画進展に期待を寄せる。

 遠浅な海が広がり、多様な生き物が息づく浦添西海岸。「宝の海」として長く親しまれ、週末には潮干狩りや海水浴を楽しむ光景が広がる。近年は西海岸道路の開通や大型商業施設の開業で、地元だけではなく多くの県民にとっても身近になり、2021年12月には浦添西海岸の愛称が「てぃだ結の浜」に決定した。

 そんな「宝の海」を守るため昨年11月から県民有志がオンラインでの署名活動を始め、現在3万3千余の署名を集めた。活動の中心メンバーの一人でサーファーのもーりーさん(46)は「合意のニュースを見て胸がざわざわした。奇跡の海を埋め立てるべきではない」ときっぱり。「移設計画を知らない県民も多い。計画を知れば多くの県民は反対する。われわれはそんな県民一人一人の声を集めている」と力を込める。

 市港川の自然海岸「カーミージー」での生き物観察やサンゴ植え付けなどの活動を行っている同自治会の銘苅全郎会長(80)は「自然保護にお金を掛ける一方で自然環境を破壊する埋め立てを進めているなんて、あまりにも矛盾している」と憤る。子どもたちの学習資源損失の影響にも触れ「大切な海であるはずなのに、(建設は)全く納得がいかない」と語気を強めた。

 市民団体「里浜22」の鹿谷麻夕さんは「誰と誰が合意したのか」と市民不在で移設が決められたことに絶句した。サンゴ礁や海草藻場が広がる浦添西海岸の豊かさを、観察会などを通して伝えてきた鹿谷さん。大型商業施設などができ身近にアクセスできるようになったことで「素晴らしい海だと気づき始めた人たちも多い。そういう人たちの声も聞いてほしかった」と話した。

 浦添商工会議所の又吉康多郎会頭は「浦添市西海岸の開発はかねてより当商工会議所が要望してきた」と、早期実現を長年にわたり要望してきたことを強調。那覇港港湾計画の20年ぶりの改訂につづいて、日米合同委員会で合意されたことで「浦添ふ頭地区の開発がスピード感を持って推進されることを期待する」と話した。

 2020年に軍港移設に関連して浦添西海岸開発の早期実現を求める意見書を賛成多数で可決した浦添市議会。比嘉克政議長は「早めに計画を進めてほしい」と要望。その上で「キャンプ・キンザーの跡地利用と一体化する形でスピード感を持って西海岸開発を進めてほしい」と語った。
 (吉田健一まとめ)