<未来拓くうるまの宝>中 アートで島おこし 集落アピールの好機に


この記事を書いた人 外間 聡子
2015イチハナリアートプロジェクト+3で作家の日比康人さんと住民の大屋寛克さんが協力して出展した作品=9月、うるま市の宮城島

 2週間で1万8331人。ことし9月に、うるま市の伊計島、宮城島、浜比嘉島、平安座島を舞台に開催した「2015イチハナリアートプロジェクト+3」に来場した人の数だ。古民家や空き地など島の集落に作品を展示し、島の生活や景色に触れられる。

 イチハナリ-は島しょ地域七つの小中学校が閉校した2012年に始まった。昨年までは伊計島のみを舞台に開催。3島はことしから開催地に加わった。プロジェクトを担当する市観光物産協会の池上俊博さんは、「来る人に見てほしいのは島や集落。イベントがなくても『行きたい』と思われる地域をつくりたい」と語る。

 プロジェクト期間中、島々がにぎわう。共同売店や集落内、アート展の会場は、特産品や飲食の販売もあり、観光客に島々をアピールする場だ。市商工観光課の目取真康裕観光係長は「橋でつながっている離島は来やすいという面で強みがある」と期待する。

 一方で、4年目を過ぎたプロジェクトは息の長い取り組みへ仕組みを転換する段階にもきている。来年は、伊計島の学校跡地にドワンゴが通信制高校「N高等学校」を開校する。一括交付金事業なので、交付金がなくなった時の資金の工面や、地域が運営に携わる力がなければイベント継続も難しい状況になる。

 島への注目が高まるなか、地域は「自治」の課題も抱える。玉城正則伊計自治会長はアートイベントで「島の人の意識は変わっているが、住民からの主体的な取り組みがあればもっと根付く。だが、担える人材がいない」と話す。ことしからイチハナリ-の舞台となった宮城島に住む上門優子さん(55)は、島の木々など素材を活用してほしいと望み「地元の人はいつでも準備している」と前向きだ。住民が求めるのは「島の価値観を大事にすること」「地域への還元」(玉城自治会長)だ。

 イチハナリ-と同様に伊計島で開催してきた「暮らしにアートin伊計島」を運営するプロモーションうるまの石川ゆうこさんは、伊計島に住みながら島々の可能性を実感している。アートを契機に始まった島おこしは「飽和状態にある沖縄観光のなかで新しい観光の在り方を提示できる」と話す。

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 新報移動編集局「うるまウイーク」地域づくりフォーラム「うるま市の宝(ひと・もの・ぶんか)を考える」は、13日午後2時からうるま市民芸術劇場で開催する。